週刊エコノミスト Online2019年の経営者

規模を追わず、強い事業体を目指す 下村真司=住友重機械工業社長 編集長インタビュー

    持っているのはサイクロ減速機の模型 interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都品川区の本社で
    持っているのはサイクロ減速機の模型 interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都品川区の本社で

    ── 主力事業は何ですか。

    下村 当社グループは多岐にわたる事業で成り立っています。その中で主力事業としては、モーターの速度を変える減速機などのパワートランスミッションの事業、それからプラスチック射出成形機などの精密機械、ボイラーなどのエネルギー・環境事業、そして建設機械の事業があります。

    ── まず減速機の事業は。

    下村 当社は中型のサイクロ減速機が主流です。通常の減速機は、回転速度を落とすためにギアの歯車を用いますが、サイクロ減速機は歯車に独自の滑らかな曲線を持つ「曲線板」を採用しています。通常の減速機のようにギア同士がぶつかって摩耗することがないため、長寿命で高効率かつ静粛性を実現し、国内でトップシェアを獲得しています。中型から派生して大型や小型の減速機、ギアボックス、モーターも手がけています。

    ── 減速機はどんなところに使われているのですか。

    下村 減速機はモーターが使われる装置にはすべて入っています。現在、物流倉庫の自動搬送システムやロボットなどで、モーターの需要は増大しているので、減速機のビジネスは広がっています。さらに減速機とモーターなどを組み合わせて提供する需要が高まっているため、昨年、イタリアの産業用モーターメーカーであるラファートを買収しました。

    ── 射出成形機とは。

    下村 射出成形機は、プラスチックの材料を溶かして金型に流し込み、固めて製品を形作る装置です。当社は成形サイクルを短縮するハイサイクル性と精密性を強みにしています。その強みを生かして、過去に音楽メディアがカセットテープからCDに代わった時、CDの成形は当社の成形機が主流でした。現在はスマートフォン関連に展開しています。スマホ用カメラのレンズはプラスチック製になっていますが、こうした精密プラスチック製品を当社の成型機で作っています。

    ── スマホ以外ではどういう分野の需要が多いのですか。

    下村 自動車向けと食品容器です。最初に当社の射出成形機が大きく伸びたのはヤクルトの容器に採用されたことでした。こうした食品容器の需要はあります。

    ── 建機の事業は売り上げが一番大きいようですが。

    下村 当社は中型のショベルカーに特化していて、燃費や作業性が良いことが評価されています。また、270度のパノラマ映像で後方視界をカバーするフィールドビューモニターなどの安全機能を他社に先駆けて標準装備しています。

     昨年は中国の事業が大きく伸びました。しかし今、中国では量を追うことに主眼を置かず、強い代理店を通して顧客に確実に売っていく方針です。欧米は好調な状態が続いています。国内も昨年は排ガス規制の駆け込み需要の反動減で需要が減りましたが、今年はこのマイナス要因がなくなります。建機需要そのものは今年も堅調だと思います。

    ── 2019年3月期は売上高が8900億円の見込みで、20年3月期までの中期計画の目標の9000億円をほぼ達成しています。次の中期経営計画の目標は。

    下村 キリが良いので、「次は売上高1兆円ですか」と聞かれます。しかし、私自身は量を追求するつもりはありません。選択と集中をしながら事業を強化していけば、必然的に事業規模は1兆円を超えると思っています。しかしその数値を前面に出して目標にしてしまうと、「強い事業体にしたい」「収益性の高い事業体にしたい」という本来の目標が隠れてしまいます。

    ── 社長就任前に、本社とグループ3社で、動く歩道の定期点検を無資格者が行ったり、検査結果を書き換えたりするなど、検査不正が発覚しました。こうした不祥事をどのように考えていますか。

    下村 起こったことには原因があります。真摯(しんし)に受けとめ、その原因をなくしていくことが大事で、再発防止につなげなければいけません。単に現場の管理を強化するだけでなく、現場の人間を含めて、みんなで議論できるようにして、個々の意識を変えていくことが重要だと思います。

    ── 原因について、何か気づいたことはあったのですか。

    下村 不祥事を起こそうと思って起こす人はいないと思います。しかし、時間の経過とともに、業務で何をやらなければいけないのかについて、疑問を持たなくなってきていたことは事実です。定型パターンの業務しか教えてもらっていなかったこともあれば、業務の内容を自分で考えなくなってきたこともあったと思います。今一度、自分が行っている業務を認識しなおすことが必要だと思います。

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 西条工場(愛媛県)で、反応容器製造を現場のトップとして指揮していました。また、人工衛星用の赤外線望遠鏡の開発にも携わり、楽しかったです。

    Q 「好きな本」は

    A 松下幸之助の『道をひらく』で、一番感銘を受けた本です。

    Q 休日の過ごし方

    A 家で読書をするか、外でゴルフをするかのどちらかです。


    事業内容:機械コンポーネント、精密機械、建設機械、産業機械、船舶、環境・プラントなど

    本社所在地:東京都品川区

    設立:1934年11月

    資本金:308億7165万円(2018年3月現在)

    従業員数:2万1017人(18年3月末、連結)

    業績(18年3月期、連結)

     売上高:7910億2500万円

     営業利益:699億2100万円


     ■人物略歴

    しもむら・しんじ

     1957年生まれ、大阪府立大手前高校卒業、京都大学工学部卒業後、82年住友重機械工業入社。2009年住友建机(唐山)製造部長、11年住友建機理事、12年取締役。住友建機販売社長、住友建機社長を経て、19年4月より現職。大阪府出身、62歳。

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