小説 高橋是清 第39話=板谷敏彦
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欧米出張の旅を続ける是清。米国特許庁では先進的な業務スキルを身につけ、ロンドンを経由、パリに到着した是清を待っていたのは後の宰相原敬との出会いだった。
第39話 是清の手料理
明治19(1886)年5月5日、パリからロンドンへと戻ってきた是清は園田孝吉ロンドン総領事の家に住み込んだ。
是清は英国でも特許制度の調査を始めたが、米国で勉強してきた後では、明らかに英国の制度は遅れていると感じた。しかしながら英国には多くの特許の蓄積がある。ここでの重要な仕事は特許関連の過去の刊行物などの資料収集と今後の刊行物の相互交換ということになった。
英当局へは、米国と同じように本来であれば有料であろう5年分の資料をタダで何とかならないかと頼むと、それはお安い御用だが、日本国の公使から英国政府へ正式に依頼をしろとのことだ。
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週刊エコノミスト
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