小説 高橋是清 第38話=板谷敏彦
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欧米出張の辞令が下り17年ぶりにアメリカの地を踏んだ是清。ワシントンの特許庁を訪れ、帳簿の付け方、書類の整理法はじめ数々の先進的な業務を学んだ後ロンドンへ旅立った。
第38話 パリの原敬
明治19(1886)年4月10日、ニューヨークを離れた是清はロンドンに到着した。当時の英国公使館には公使が長州の河瀬真孝、書記官が薩摩の大山綱介、公使館員として24歳の佐々木高美が赴任していた。彼は昔、是清が一時下宿していた駿河台の土佐人佐々木高行の長男である。ロンドン総領事としては薩摩の園田孝吉、こちらは大学南校時代からの知り合いで、さらに是清は偶然ながら夫人の父親とも面識があったので、園田家では家族同様の扱いを受け、仲間に囲まれた居心地の良い滞在となった。
ロンドンに到着して間もなく、谷干城(たにたてき)農商務大臣がパリにやって来るというので、4月23日には園田総領事と共にパリまであいさつをしに行った。
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週刊エコノミスト
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