小説 高橋是清 第35話=板谷敏彦
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(前号まで)
農商務省で商標登録と専売特許条例法制化の準備に没頭する是清を前田正名が訪ねた。前田には日本の殖産興業について数々のアイデアがあり、是清の助力が欲しいという。
第35話 興業意見
是清が前田正名(まさな)に出会った明治16(1883)年、「明治14年の政変」によって政府を追われた大隈重信に代わって大蔵卿(きょう)(大臣)に就任した松方正義は、国立銀行条例を改正した。
それまで紙幣を発行することができた150数行の国立銀行は経営期限を事後20年までとされ、その時までに解散か普通銀行への転換を選択しなければならなくなった。さらに翌年の兌換(だかん)銀行券条例によって発券銀行は日本銀行のみに限定され、西南の役以来乱発されていた紙幣の本格的な整理が始まった。
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週刊エコノミスト
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