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新元号は「令和」 新風注いで日本流にアレンジ=鈴木洋仁

    新元号への関心は高く、東京・新宿の大型スクリーン前には黒山の人だかりができた(Bloomberg)
    新元号への関心は高く、東京・新宿の大型スクリーン前には黒山の人だかりができた(Bloomberg)

    為政者の威厳から独自の伝統に

    「平成」に代わる新元号「令和」が4月1日、誕生した。万葉集を典拠としており、一部有識者からは類似の表現がある中国の古典『文選(もんぜん)』を参照した、との指摘もあるが、歴史上初めて国書のみを出典とする元号だ。

     中国に端を発する元号は、紀元前2世紀の前漢の時代、武帝が定めた「建元」が最初で、その後は朝鮮やベトナム、日本に広まった。ただ中国の元号をおおむねそのまま用いた朝鮮に対し、日本は最初の元号とされる645年の「大化」以降、一部を除き独自の元号を使っている。

     元号の起源・中国では1911年、清の終焉(しゅうえん)・中華民国設立とともに元号は廃された。その他の国でも廃止され、一人の皇帝に一つの元号とする「一世一元」制度を定めた元号を使っているのは今や日本のみだ。

     元号は為政者の時代の支配を示す威厳の一つだった。日本の場合、1868年の明治への改元とともに、新政府が一世一元を法的に定めた。その後、大日本帝国憲法や旧皇室典範を制定し、その細則の登極令で手続きを定めた。とりわけ重要なのは、元号は最終的に天皇が決定することを明記した点だ。天皇が為政者であり、その時代の支配を示す記号として元号は位置づけられていたのだ。

     第二次世界大戦敗戦後の日本国憲法施行と旧皇室典範の廃止により、元号の法律上の規定はなくなったが、その後も政府は「事実たる慣習」として存続させた。さらに長い審議と検討を経て1979年には元号法を制定した。

    書店には新元号の典拠「万葉集」の特設コーナーも
    書店には新元号の典拠「万葉集」の特設コーナーも

    元号使用は習慣

     新元号決定後に共同通信が実施した世論調査によると、新元号に好感を持っている人は73.7%に上っている。一方で「普段の生活で新元号と西暦のいずれを使いたいか」とする質問に対し、「両方」と回答した人が45.1%で、「西暦」が34%、「新元号」が18.8%だった。現在でも公文書の日付表記は元号が主流となっているが、日常生活で「元号だけ使いたい」と答える割合は少ないと見ていい。

     新元号が好意的に受け入れられているとはいえ、グローバル化に伴い、企業をはじめ民間では西暦表記が広まっている。それでも若い世代に生年月日を尋ねると、元号で答えるケースがある。これは日本人の底流には元号という習慣が流れているとも言えるだろう。

     少なくとも安倍晋三政権はその底流を重視し、漢籍のみを出典とするのではなく、元号史上初めて国書のみを典拠とした点に強いこだわりを見せている。

     日本の元号制度は中国にルーツを持ちながらも、独自の元号を定めて1400年近い歴史をつなげてきた。独自の歩みにより日本の伝統として引き継がれてきたと言ってもいいだろう。今回、その典拠を漢籍ではなく万葉集とした点も、この日本独特の歴史に連なる。

     すなわち中国発祥の漢字文化を受け入れながら、新風を注いで日本流にアレンジしている点で、伝統を引き継いでいるとも言える。

     新たな元号は、今のところ歓迎されているようだ。日本の元号を巡る歴史について、見つめる良い機会かもしれない。

    (鈴木洋仁・東洋大学研究助手)

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