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11年半ぶり 景気後退の予兆? 長短金利の「逆イールド」発生 FRBも金融引き締め「撤回」=長谷川克之

    米長短金利が逆転した後に景気後退し、日経平均も下落
    米長短金利が逆転した後に景気後退し、日経平均も下落

     米国債市場で3月22日、10年物国債利回り(長期金利)が3カ月物国債利回り(短期金利)を下回り、長短金利が逆転する「逆イールド」が生じた。2007年8月以来11年半ぶりで、米国ではこれまでの経験則から、逆イールドから1~2年程度で景気が後退する傾向がある。景気の先行きへの懸念が高まり、週明け25日の東京市場でも日経平均株価が前週末比3%安と大幅に売り込まれたほか、一時1ドル=110円を割り込む円高水準になった。

     昨年12月以降、2~5年の中期債ゾーンで金利の逆転は生じたが、いよいよ長期債と短期債でも逆転が起き、市場では世界経済の減速懸念が広がった。長短金利差は10年物と2年物や、10年物と1年物を比べる見方もあるが、米サンフランシスコ連銀が昨年8月に発表した論文では、10年物と3カ月物の逆イールドが1年後の景気後退を予告する指標として最も優れているという。前回の逆イールドの約1年後には、リーマン・ショックが起きている。

     債券の満期までの残存期間を横軸に取り、残存期間ごとの利回りを縦軸に取った利回り曲線(イールドカーブ)は、通常は残存期間が長いほど利回りが高くなるため、右肩上がり(順イールド)となる。米債券市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和を終えた後の15年夏以降、短期金利は上昇を続けた。一方、長期金利は昨年10月に3.2%台を付けた後、足元では一時2.4%を割り込む水準まで低下し、イールドカーブが平たん化(フラット化)していた。

    消費増税は先送り?

     長期金利低下の背景には、世界経済の悪化がある。米中通商協議の難航が伝えられる中、中国経済への不安が根強いことに加え、ユーロ圏での景況感指数の下振れを契機に欧州経済の悪化懸念も強まった。

     世界経済の悪化を恐れるのは、米連邦準備制度理事会(FRB)も同様だ。3月19、20日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を据え置くと同時に、経済見通しと政策金利見通しを下方修正。バランスシート(BS)の縮小を9月に停止すると決めた。また、年内の予想利上げ回数も、前回見通し(昨年12月)の2回からゼロ回に引き下げられ、これまでの金融引き締め路線を事実上撤回したと言える。

     もっとも現時点では、米国経済の先行きを過度に悲観する必要はない。パウエルFRB議長も、足元では昨年10~12月期と比べれば減速してはいるものの、景気は堅調との判断を崩していない。FOMCは米国の経済見通しは引き下げたが、長期平均である1.9%以上のペースで今年、来年と景気拡大が続き、インフレ率も2%の目標近傍で推移すると見込んでいる。

     今後はどうなるか。メインシナリオは、中国や欧州も含めて世界経済が年央に向けて徐々に底入れに向かう見立てだ。だが、年後半の回復は緩やかにとどまり、政策金利の据え置きは長期化しよう。一方、悲観的なシナリオとしては、中国や欧州の経済が一段と下振れて米国経済も失速することが考えられ、通商問題の紛糾、政治情勢の混乱、地政学リスクが引き金になりうる。そうした場合にはFOMCは緊急避難的な利下げも辞さないはずだ。

     この悲観的シナリオの下では、米金利低下が円高圧力となり、日本経済にも打撃を与える。日本銀行に対する追加緩和圧力も高まるが、実際には金融政策での対応余地は限られ、財政拡大に頼らざるを得ない。タイミングにもよるが、10月の消費増税の先送りが選択肢となっても不思議ではない。悲観的なシナリオがメインシナリオにならないか、これまで以上に目を凝らす必要がある。

    (長谷川克之・みずほ総合研究所チーフエコノミスト)

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