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認可外幼稚園の倒産騒動 保護者の不安収まらず=内藤修

「倒産・閉園」が一転「事業継続」となったALC貝塚学院(川崎市)
「倒産・閉園」が一転「事業継続」となったALC貝塚学院(川崎市)

 3月末、認可外幼稚園「A・L・C・貝塚学院(川崎市)」が巻き起こした「倒産・閉園」騒動。卒園式翌日の3月26日、保護者宛てに運営会社が破産を突然連絡したが、3日後の保護者向け説明会では一転、事業継続の意向を明らかにした。4月8日の入園式も予定通り行うという。しかし、会社側の対応に300人を超える園児と保護者の不安と怒りは、収まる気配がない。

「私どもの稚拙な経営判断により、皆さまに多大なるご心労をおかけした」。説明会の席上、頭を下げたのは運営会社のアメリカンラングエイジセンター(ALC社)で、実質的に園をまとめる鈴江菜穂子氏だ。

 2005年には3億円を超える年間収入を上げていたが、近年は入園児数が減少。15年には150人いたが、19年には71人(予定者)まで落ち込んだ。1990年代前半に行った園舎などの建設に伴う借入金負担も重い。18年9月期末時点で、約8億6300万円の負債が残る。

 3月に事業の継続を断念したが、太陽光発電事業を手がけるサン(川崎市)の織戸四郎代表が支援を打診。これにより、一転して事業継続となった。

 ただ問題は山積している。まず、園児数の問題。19年の入園予定者は激減。今回の騒動で一定数の園児がすでに他の園に移ることを決めており、前期決算で赤字(587万円)だった経営は一段の悪化が必至だ。

 次に、「債券」の問題。入園時に保護者から1口5万円で集めた債券は、在園児や卒園児を合わせて総額1億3000万円にのぼる。今回の騒動で一括返還を求める保護者も出てくるだろう。事業を承継するサンが債券を含め、ALC社の債権・債務をどう引き継ぐかもポイントとなる。

 最後にサンに対する保護者側の期待と不安。今後、一定の資金支援は期待できるが、幼稚園事業のノウハウは乏しい。3月29日の説明会にサンの織戸代表が出席しなかったことも、保護者を不安にさせた。解雇予告を一度受けた教職員も園に残るかわからず、事業運営ができるかは不透明なままだ。

(内藤修・帝国データバンク横浜支店情報部長)

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