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大塚家具が電撃提携した中国企業の凄まじい購買力=田代秀敏

握手はしたが、まだ覚書の段階(大塚家具の大塚久美子社長と中国航空器材の賈宝軍董事長)
握手はしたが、まだ覚書の段階(大塚家具の大塚久美子社長と中国航空器材の賈宝軍董事長)

 経営危機が続く大塚家具が、想定外の起死回生を図ろうとしている。中国のVIPを対象にしたビジネスで再生を図ろうという戦略だ。4月25日に発表したプレス・リリースによると、大塚家具は24日に中国航空器材集団公司(中国航材)と、中国国内のプライベートジェットや中国国内の空港のVIP専用ラウンジの内装業務を受託する方向で検討を開始する覚書を締結した。

 大塚家具は、高級家具のコーディネート販売や豪華客船の艤装についてのノウハウを生かし、中国でプライベートジェットの内装ビジネスへの進出を目指し、空港のVIPラウンジの内装では、テーブルやソファーだけでなく絨毯や壁紙までバルクでの受託を目指す方針だ。大塚家具ブランドの羽根布団「ダウナ」などを中国で機内販売することも検討しているという。

エアバス300機を買った「中央企業」

 大塚家具は国内事業の不振から、18年12月期に3期連続の最終赤字に陥っていた。このため、3月には中国の越境EC(電子商取引)大手や中国の家具販売大手と資本業務提携に踏み切ったが、今回の提携はこれをさらに補強するもの。

 というのも、中国で保有されるプライベートジェットは日本の約5倍の500機以上あり、毎年100機程度の新規需要が見込まれている。また、中国政府は2035年までに国内の空港を現在の約2倍の450カ所に増やす方針で、VIPラウンジも大幅に増加することが見込まれている。

 この巨大な市場を大塚家具が取れる可能性は、覚書を締結した相手である中国航材の特殊性にある。中国航材は、日本ではあまり知られていないが、中国を代表する巨大企業のひとつである。

 中国で「中国…」という社名を名乗れるのは、中央政府の国務院に直属する国有資産監督管理委員会が支配株主である国有企業97社と財政部が支配株主である国有企業4社だけで、「中央企業」(央企)と呼ばれる。中国航材は、中国移動通信集団有限公司(チャイナ・モバイル)や中国石油天然気集団有限公司(ペトロチャイナ)と並ぶ、その中央企業のひとつである。

 中国航材は1980年に、中央政府内の民用航空輸送業務部門を企業化して、中国航空器材公司として設立された。その後、組織改編が何度も行われ、07年に現在の組織となっている。

 習近平総書記が今年3月に訪仏した際に、エアバス社から航空機300機を350億㌦(約3・9兆円)で購入することを宣言したが、実際にエアバス社と購入契約を締結したのは中国航材であった。これだけのビッグネームと提携を結んだ経緯について、大塚家具は「数ある提携相手の1社という認識ではないか」と説明するが、「中国はB2C(個人向け)だけなく、B2B(法人向け)にも注力していく方針」という。

再建に向け中国との関係を強化する大塚家具の大塚久美子社長
再建に向け中国との関係を強化する大塚家具の大塚久美子社長

航空機リースも中国最大手

 中国航材は航空機リース会社として中国最大手で、保有する機材を中国南方航空(広州が拠点、488機を運用)、中国東方航空(上海、400機)、中国国際航空(北京、322機)などに対しリースしている。ちなみに、全日空と日本航空の運用機数はそれぞれ292と205機である。

 中国航材は、傘下に空港建設を手掛ける北京中航空港建設工程有限公司を持つ。さらに中国航材は、中国のプライベートジェット輸入を独占している。

 大塚家具が中国航材から上記の業務を受注できれば、安定的に成長する大きな収益源を得る可能性が高くなる。

 高級家具を取り扱う大塚家具のような世界の会社が中国航材にアプローチが殺到していることは想像に難くない。そのなかで大塚家具が覚書の締結に漕ぎ着けたことは注目に値する。大塚家具が実際に中国航材から受注するかどうか、今後が注目される。

(田代秀敏、シグマキャピタル チーフエコノミスト)

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