週刊エコノミスト Online2019年の経営者

本物志向でハワイアンズの集客強化 井上直美・常磐興産社長

    井上直美 常磐興産社長 ウオータースライダー「ビッグアロハ」の下で (撮影=佐々木龍)
    井上直美 常磐興産社長 ウオータースライダー「ビッグアロハ」の下で (撮影=佐々木龍)

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 東日本大震災から8年たち、スパリゾートハワイアンズの現状は。

    井上 震災で屋内プールがあるメインの施設が大きな被害を受けて、一時営業できなくなりましたが、11カ月後に全面再開、その後は原発事故の風評被害もありましたが、応援してくれる皆さんのおかげで、来場者数は震災翌年に震災前を上回る140万人、翌々年には150万人を達成、落ち込みを回復させることができました。

     その後はやや伸び悩んでいて、2017年度は143万人、18年度は猛暑や台風などの影響もあって第1四半期から第3四半期(4~12月)までで前年同期比9・4%減の101万人。ですが、来場者数より問題なのは人手不足です。

    ── どういうことですか。

    井上 ハワイアンズは知名度こそありますが、東京で人を募集しても、ハワイアンズのある福島県いわき市で働いてくれる人は多くありません。ですから地元の従業員を中心になんとかするしかない。重要なのは今のような人手不足が続くと、来場者を満足させるだけの十分なサービスができなくなるという認識です。手数が減るとサービスの質も落ちる。ならばIT(情報技術)をうまく使ったり、業務改革をして人手不足を補ったうえで適正な来場者数にしなければならない。やみくもに来場者数を増やそうとは思っていません。

    ── 巨大なウオータースライダーの「ビッグアロハ」が一昨年オープンして話題になりました。

    井上 ビッグアロハは、10階建てビルと同じ、高さ40.5メートルからすべり降りる、高低差、長さとも日本一の大迫力のボディースライダーです。全長は283メートル ですべるのに四十数秒かかります。宇宙の中を疾走するような感覚で何度もやりたくなります。利用者は最初の3カ月で累計10万人を超えました。予想以上の人気でピーク時は180分待ちということもあります。

    ── 看板であるフラガールのショーなどをどう充実させていきますか。

    井上 映画「フラガール」の世界を大切にしつつ、いつまでも見に来てもらうためにはダンスのレベルは常にトップにいなければなりません。日本でもフラ文化が浸透してきて、あちこちにフラ教室があります。重要なポイントは本物志向を貫くことです。ハワイだけでなく、タヒチ、サモアなどポリネシアのダンスでも同じで、今の時代、2番手、3番手ではだめだと思っています。

    ── 実際にショーを見ると、プロジェクションマッピング(舞台などにプロジェクターを使って映像を投影する手法)を利用するなど進化していますね。

    井上 私の前職がみずほ情報総研というIT関連のシンクタンクの社長だったこともあり、最新の技術を活用して、お客さんを楽しませることも重要だと考えています。例えばボーカロイド(音声合成技術)の初音ミクやAI(人工知能)ロボットのぺッパーなどに踊らせたり、というアイデアもあっていいんじゃないか。一方で、全国から集まってくれているフラのダンサーたちには、常磐炭鉱の歴史もきちんと理解してほしいとお願いしています。お客さんもそれを知って見ているので、歴史を背負って踊ってほしいと言っています。

    ── 訪日外国人の需要は。

    井上 全体の5%以下でまだまだです。ですが、ここ数年は確実に増えています。福島への訪日外国人の伸び率は低いですが、冬のシーズンは会津地方の裏磐梯(うらばんだい)の雪と、ハワイアンズの夏をセットで楽しめるなど、県内の観光地と一緒に魅力をアピールしていきたいと思っています。今年度は台湾、タイ、ベトナムなど親日国を中心に、地元の旅行業者と提携して6000人を呼び込みたいです。

    ── 今後の取り組みとして、未来化構想「アロハプロジェクト」を打ち出しています。

    井上 常磐ハワイアンセンターとして開業してから15年で50周年を迎え、次の半世紀をどうするかを考えていくプロジェクトです。ビッグアロハもその一つですが、大きなものとしては、宿泊施設の更新を検討しています。これまでの客室は4人部屋が中心でしたが、観光統計などを見ると、最近は2人客、1人客が増え、そうした人たちの方が多くのお金を使う。よりよい部屋やサービスを提供することで、そういう利用客を取り込んでいきたい。

    ── 歴代の社長はみな生え抜きで、井上さんは初めての“外様”社長です。

    井上 だからと言ってやりにくいということはありません。最初はどんなやつが来たのかと思ったかもしれませんが、その分、社員とのコミュニケーションを心がけ、どこへでも顔を出します。会議でも自由にものが言える雰囲気にしましたし、話してみればそんなに悪いやつじゃない、と分かってもらえているんじゃないかな(笑)。

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 銀行で働いていて、夜中まで仕事して、その後飲みに行っていました。典型的なワーカホリックでしたね。

    Q 「好きな本」は

    A 海外出張には『論語』『徒然草』『万葉集』を持っていって読みます。

    Q 休日の過ごし方

    A 趣味の絵を描いたり、ゴルフをしています。


     ■人物略歴

    いのうえ・なおみ

     1950年東京都生まれ。74年東京大学経済学部卒業、富士銀行(現みずほ銀行)入行。常務取締役などを経て、2010年みずほ情報総研社長。常磐興産顧問を経て13年に社長。68歳。


    事業内容:スパリゾートハワイアンズの運営、石炭、石油、電力の販売など

    本社所在地:福島県いわき市

    設立:1944年3月

    資本金:21億4100万円

    従業員数:659人(2018年3月末、連結)

    業績(18年3月期、連結)

     売上高:290億5700万円

     営業利益:12億5200万円

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