週刊エコノミスト Online2019年の経営者

中長距離LCCで飛躍を 赤坂祐二・日本航空社長

    撮影:武市公孝=東京都品川区の本社で
    撮影:武市公孝=東京都品川区の本社で

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 中長距離国際線の格安航空会社(LCC)「ZIPAIR Tokyo(ジップエア トーキョー)」を設立したねらいは。

    赤坂 日本航空(JAL)の既存顧客とは異なる、低価格志向の人々に飛行機に乗ってもらえると確信できたからです。今後の成長性を考えると、こうした客層の市場は大きく、LCCをやらない選択肢はないと判断しました。2030年に年間6000万人の訪日外国人旅行客を誘致する国の目標を達成するうえでも、中長距離LCCでお客さんを日本に呼び込むことが必要です。

    ── なぜ中長距離なのですか。

    赤坂 現在、中長距離LCCの事業者は極めて少ないです。短距離に比べ、ゆとりのある客室にしなければならないので座席数は減るし、運航頻度も低くなるため、収益を上げるのが難しいと言われます。しかし、燃料費や整備費はJALのスケールメリットを生かして安くできます。運賃は他社のエコノミークラスより安くしたいと思っています。まずは20年にバンコクとソウルに就航し、1年くらい実績を積んでから、長距離に進出する予定です。

    ── 長距離は米西海岸からですか。

    赤坂 米西海岸はマーケットも大きく、魅力的です。太平洋をまたぐLCCはまだないため、需要は間違いなくあると思います。

    ── 五輪が開催される20年に、羽田空港の国際線発着枠拡大が予定されています。ライバルの全日本空輸(ANA)とは同等の配分になりそうですか。

    赤坂 配分はあくまで国の判断ですが、私はそうなると思います。航空輸送事業の責任と役割をきちんと果たしてきたので、差がつく理由はないと思います。我々としては頂いた枠を使ってインバウンド(訪日外国人)をいかに増やしていくか考えたいです。

    ── パイロットは不足しませんか。

    赤坂 30年ごろに現在のパイロットが大量退職し、足りなくなるのが「2030年問題」です。現在、採用数を増やしており、自社養成システムで養成していけば、対応できると思っています。

    ── 10年の経営破綻後、整理解雇などでJALを去ったパイロットを再雇用することは。

    赤坂 JALでは新卒採用のパイロットを養成していきますが、「ジップエア」では受け入れます。実際に応募もありました。

    ── 機材は足りますか。中期経営計画では、20年度までに飛行機は5機しか増えません。

    赤坂 今、飛行機をためているところです。客室の改修や整備をしている飛行機が数機あるということです。20年の発着枠拡大に向け、4、5年かけて徐々に増やしてきています。

    ── これまでは米ボーイング社の飛行機を使ってきましたが、今年9月からエアバス機(A350)を初導入します。なぜですか。

    赤坂 整備出身の立場から言うと、エアバスは中型機A320の大ヒットをきっかけに、性能も部品の供給体制もぐんと良くなり、運用しやすくなりました。その流れでより座席数が多く長距離飛行できるA350が登場し、ボーイング777の後継機を探していた我々とタイミングが合ったのです。

    ── ANAはハワイ路線にエアバスの超大型機A380を投入しましたが、どう対応しますか。

    赤坂 我々は、比較的小さな機体で個人客をターゲットにしており、戦略が全く違う。競合せず、すみ分けできると思います。かつて、我々もハワイにジャンボジェット機を飛ばしてパックツアー客を大量輸送していました。しかし、ハワイに行く人はかつてほど多くなくなり、最近は沖縄に行く人の方が多くなっています。ですが、A380でもう一度ハワイに目が向くのはチャンスだと思います。

    ── 人口が減る中、国内線は。

    赤坂 今は好調ですが、今後は人口減や新幹線建設で市場は小さくなると言われます。しかし、地方の有望な観光資源を整備していけば、人口の減少幅以上にインバウンド需要が出て、国内線の需要は増えると思います。そのきっかけとして東京五輪の期間中に、東京だけでなく、地方にも来てもらえるような仕掛けを考えています。

    ── パイロットらの飲酒不祥事が止まりません。再発防止策を講じる中、4月にも乗務前検査で男性機長からアルコールが検出され、交代しました。

    赤坂 ご心配をおかけし、誠に申し訳なく思っています。全社を挙げて再発防止に向けた取り組みを進めていますが、ごく一部、対応しきれない社員が残っていました。こうした現状にしっかりと向き合い、組織としてきめ細かい目配りでリスクの芽を確実に摘んでいくよう全力で取り組みます。

    (構成=岡田英・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 飛行機が到着してから出発するまでに機体をチェックする「ライン整備」の現場にいました。時間との勝負で、ずっと走り回っていました。

    Q 「好きな本」は

    A 司馬遼太郎や山岡荘八の著作など、歴史小説が好きです。

    Q 休日の過ごし方

    A 最近あまり休んでいませんが、スポーツ観戦です。高校・大学野球、サッカー、水泳、スキーなど幅広く見に行きます。プロ野球は日ハムファンです。


     ■人物略歴

    あかさか・ゆうじ

     1962年生まれ。北海道出身。札幌北高校卒。東京大学大学院工学系研究科航空学専攻修了後、87年日本航空入社。2014年執行役員整備本部長、JALエンジニアリング社長に就任。16年に日本航空常務執行役員、18年4月に社長に就任。57歳。


    事業内容:航空運送事業など

    本社所在地:東京都品川区

    設立:1951年8月

    資本金:3558億4500万円

    従業員数:3万3038人(2018年3月、連結)

    業績:(19年3月期、連結)

     売上高:1兆4872億6100万円

     営業利益:1761億6000万円

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