小説 高橋是清 第47話=板谷敏彦
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国民の期待を集めるペルー・カラワクラ銀山開発の指揮をとる是清。開山式を終え事業が始まった矢先、採掘現場から「銀山はすでに掘り尽くされている」という衝撃的な報告が届いた。
第47話 頼れぬ農商務省
明治23(1890)年3月26日、急きょ下山してきた小池技手の報告によって、カラワクラ銀山はどうやら廃坑であることが判明した。残された品位が低い鉱石ではどう工夫して製錬しようが、当時の技術では採算はとれそうもなかった。
是清はヘーレンを訪ねて一部始終を話すと、彼は非常に不機嫌になった。ヘーレンは既に山を買い、この計画に25万ドルを投入しているのだ。もしもカラワクラ銀山が廃坑だとして、是清は契約を打ち捨てて日本へと帰ることができるが、彼は失敗による経済的損失とその悪評をひきずったままペルーで暮らさなければならない。彼に対してここで事業をやめるとは言い出せなかった。
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週刊エコノミスト
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