坂井辰史・みずほフィナンシャルグループ社長 LINEとは「是々非々」 スマホ決済で還元も
2019年3月期連結決算で、基幹システムの減損や外債処理などで6954億円もの損失を計上し、大幅減益となったみずほフィナンシャルグループ(FG)。最終利益でライバルの三菱UFJや三井住友の両メガバンクとの差が開く中、どう再起を図るのか。坂井辰史社長に聞いた。
(聞き手=浜條元保・編集部/構成=岡田英・編集部)
── 決算と同時に発表した経営計画では、計画の期間を3年から5年にした。理由は。
■デジタル化と少子高齢化の進展で、金融業の構造がこれまでにないスピードで変わっている。3年だと今までの延長線上で考えてしまう。5年後の世界を走りながら考え、変化に対応した「次世代金融」への転換を目指す。そのために、店舗網などストックの部分を構造改革で軽くし、新事業に振り向けていく。
── 本業のもうけを示す連結業務純益は19年3月期は3933億円。5年後に9000億円にする計画だが、実現性は。
■まずは安定的な収益源を伸ばし、LINE(ライン)との新銀行設立など、将来の成長が見込める新ビジネスの種まきをする。21年度に7000億円の水準に乗せ、以降は毎年1000億円ずつ増やして9000億円を達成する。前半の種まきが後半に成果を生む。
── LINEとは、スマートフォン決済では競合関係にある。
■LINEとの銀行設立に向けた提携では、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に銀行機能を入れるうえで、我々がプラットフォーマー(基盤提供者)としてノウハウを提供する。運転席にLINE、我々は助手席という発想だ。一方、我々が今年3月から始めたスマホ決済アプリ「Jコインペイ」は、LINEとは戦略が全然違う。ある部分では協力するが、ある部分では競合もするということだ。
── スマホ決済アプリが乱立する中、Jコインペイの勝算は。
■明らかに強い点が二つある。一つは、預金口座との連動制。一度ポイント化したものを口座に戻す際に手数料がかからない。日本人に浸透している銀行口座をベースにデジタル化していく強みは間違いなくある。もう一つは、加盟店手数料が一番安く、コスト競争力がある。今後、還元キャンペーンもやる予定だ。
── 経営計画を実行する5年間のマクロ経済環境をどう想定しているか。
■世界経済は18年をピークに緩やかに減速していき、マイナス金利も継続するだろう。減速はしても景気後退まで行くとは見ていないが、リーマン・ショック級の景気後退を想定した種々のストレステストを実施し、信用力も営業機能も維持できると確認している。
── 経営計画を5年にしたということは、あと5年は社長を続ける?
■それは指名委員会が決める話。自分がやる、やらないより、必要なことをやっていく。先日、FG(グループ内の銀行、証券など)合同の店長会議を初めてやった。慣れたやり方でなく、覚悟を持ってみんなで走りながら考えていきたい。