週刊エコノミスト Online2019年の経営者

4Kテレビなど大型家電に本格参入 大山晃弘・アイリスオーヤマ社長

    Photo 武市公孝:東京都港区の東京本部で
    Photo 武市公孝:東京都港区の東京本部で

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── これまでホームセンター向けの生活用品を中心に手掛けてきましたが、昨年末に4Kテレビやドラム式洗濯機など大型家電を発売しました。日本企業はほとんど撤退する方向ですが、今なぜ家電に力を入れていくのでしょうか。

    大山 われわれは「変化はチャンス」と言っています。家電メーカーが減っているなら、それは変化であり、そこにビジネスチャンスがあります。もともとサーキュレーター(空気循環機)などの軽家電を手掛けていますが、まだまだ家電にはのびしろがあると思っています。他社は売り方が悪かったりして、お客様に適切に商品を提案できていないと感じますし、まずは現在の製品に満足していない層をターゲットに商品を展開していきます。

    ── 4Kテレビについて、他社製品とは何が違うのですか。

    大山 4K用液晶パネルはほぼ同じですが、他社製品は独自メニューやインターネットに接続して買い物などを楽しむアプリケーションを組み込んでいます。当社製品は余計な機能をそぎ落とし、チューナーが付いて放送が映るというシンプルな構造です。その分、価格を抑えて提供できています。

    ── どのくらい安いのですか。

    大山 他社の半分まではいかないですが、今は65インチの4Kテレビが約15万円です。

    ── 一方、洗濯機については。

    大山 ドラム式洗濯機に関しても、4Kテレビと同じ話で、既存製品は非常に価格が高い。しかし、乾燥機能などを排除して機能を絞れば、安い価格で提供できます。昨年発売した4Kテレビやドラム式洗濯機はテスト販売という位置づけで、機能をそぎ落としたシンプルな製品を提供する。そして、今年から来年にかけては、価格一辺倒ではなく独自性を生かした製品を提供します。

    ── 独自性を生かした製品とは。

    大山 高い技術は導入していないが、使って簡単で便利な家電製品を「なるほど家電」と呼んでいて、当社の製品開発のベースにあるコンセプトです。最近の代表的な製品としては布団乾燥機があります。従来の布団乾燥機は袋に温風を吹き込み、布団を乾燥させていましたが、袋があることで設置や片付けが面倒でした。当社は袋をやめて、ホースを伸ばすだけで簡単に設置できて、すぐに乾燥できるようにしました。従来の袋を使うメリットはありますが、袋がなくても十分に乾燥できますし、そこに当社製品の工夫があります。

    ── 家電を安く作ることは簡単ではないと思います。競争力のポイントは。

    大山 まず大型白物家電については中国のパートナー企業で安く製造できます。一方、軽家電は中国の自社工場で製造していますが、工場の自動化を進めています。また、物流拠点が国内9カ所にあり、直接コンテナを仕立てて一気に運べる物流力があります。販売では、量販店やネット通販に直接卸すダイレクトマーケティングを展開しています。さらに、当社は非常に判断が早く、製品開発も即断即決です。開発期間が短いのでR&D(研究開発)の生産性が非常に高い。こうした複合的な努力で価格競争力を高めています。

    ── 昨年7月、社長に就任しましたが、大山健太郎会長から、経営を親子で引き継いだことをどのように考えていますか。

    大山 事業に継続性があり、なおかつ事業承継がスムーズにいくことは、働いている社員もメリットと感じていると思います。また、中長期的な経営方針の下で会社経営ができることも強みです。

    ── 売上高はグループ全体で4750億円ですが、2022年に1兆円の目標を立てています。

    大山 当社はこれまで中期目標を出さない会社でしたが、昨年の社長交代の際に打ち出しました。経営陣が代わって不安になる人もいるので、従来どおり成長路線で頑張っていくという意思表示を込めて、1兆円の目標を掲げました。実現は簡単ではないですが、不可能ではないと思っています。

    ── 目標達成のために、何に注力していきますか。

    大山 まずは家電で、特にテレビ、洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどの大型家電です。ここは市場が大きいので伸ばしていきたい。次に法人向けLED照明と付随する内装や家具です。今、日本ではオフィスの移転が盛んですから、この旺盛な法人需要を取り込みたいと思います。そしてネット通販です。日本ではまだネット通販は小売業全体の1割に満たない規模ですが、将来伸びると思っています。国内ではこの3点に注力します。

     海外事業については、家電とネット通販の両軸で、中国、韓国、台湾から東南アジア、欧米へと広げようと思っています。

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 問題を抱えていた米国法人の立て直しを終えて、日本に戻ってきたのが32歳の時でした。以降は家電以外の製品の開発と海外事業の統括を担当しました。

    Q 「好きな本」は

    A 歴史や科学に関する本を中心に読んでいます。

    Q 休日の過ごし方

    A 子どもが小さいので、家で子どもと一緒に過ごすことが多いです。家庭菜園や料理をしています。


     ■人物略歴

    おおやま・あきひろ

     1978年生まれ。私立東北学院高校卒業、米ベロイトカレッジ中退。2003年アイリスオーヤマ米国法人入社、10年アイリスオーヤマ入社、グローバル開発部部長、執行役員ホーム開発部部長を経て、15年取締役。18年7月、代表取締役社長に就任。現在に至る。宮城県出身、41歳。


    事業内容:生活用品、家電などの企画、製造、販売

    本社所在地:宮城県仙台市

    設立:1971年4月

    資本金:1億円

    従業員数:1万2661人(2019年1月現在、グループ)

    業績(18年12月期・グループ)

     売上高:4750億円

     経常利益:270億円

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