教養・歴史コレキヨ

小説 高橋是清 第49話=板谷敏彦

挿絵・菊池倫之
挿絵・菊池倫之

(前号まで)

 国民の期待を集めたペルー銀山開発事業は、ずさんな事前調査が原因で失敗。株主であり現地で陣頭指揮もとる是清は損切りに奔走するが、「山で失敗した人」「一大馬鹿」と批判される。

第49話 蜆売り

 解散した日秘鉱業会社整理のために屋敷も手放してしまった是清。今や収入は農商務省局長非職の給料分だけである。とは言っても非職時点での俸給が年2200円なのでその3分の1でも年に733円あった。国家公務員の給与が高かった当時、世間的には結構な金額だが、是清はほとんど意地で国内鉱山の開発も続けていたので何かと入り用だった。住んでいた家を売ってしまったのと、生活を質素にする必要に迫られて、近所の小さな長屋に引っ越した。

「どうしてこんなところに引っ越すのですか?」

残り2333文字(全文2663文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事