小説 高橋是清 第49話=板谷敏彦
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国民の期待を集めたペルー銀山開発事業は、ずさんな事前調査が原因で失敗。株主であり現地で陣頭指揮もとる是清は損切りに奔走するが、「山で失敗した人」「一大馬鹿」と批判される。
第49話 蜆売り
解散した日秘鉱業会社整理のために屋敷も手放してしまった是清。今や収入は農商務省局長非職の給料分だけである。とは言っても非職時点での俸給が年2200円なのでその3分の1でも年に733円あった。国家公務員の給与が高かった当時、世間的には結構な金額だが、是清はほとんど意地で国内鉱山の開発も続けていたので何かと入り用だった。住んでいた家を売ってしまったのと、生活を質素にする必要に迫られて、近所の小さな長屋に引っ越した。
「どうしてこんなところに引っ越すのですか?」
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週刊エコノミスト
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