週刊エコノミスト Online2019年の経営者

電気・ガスのセット料金に自信=岩根茂樹・関西電力社長

    Photo 中村琢磨 東京都千代田区の東京支社で
    Photo 中村琢磨 東京都千代田区の東京支社で

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 2016年4月の電力小売り自由化から3年が過ぎました。

    岩根 「3・11」(東京電力福島第1原発事故)の影響で、11基ある当社の原発すべてが停止し、安定供給と価格競争力の両面で苦しい中で自由化が始まりました。ただ、17年に高浜原発(福井県)3、4号機が、18年に大飯原発(同)3、4号機が再稼働したことにより、電気料金を17、18年度に値下げしたので(17年度の値下げ率は平均4・29%、18年度は同5・36%)、相当に価格競争力が出てきたと思います。

    ── 家庭用など低圧分野での新電力のシェアは、関電域内で16・2%(19年1月時点)まで高まっています。

    岩根 (当社からの)離脱は続いていますが、2度の値下げをした後に、電気とガスをセット料金で提供する「なっトクパック」を昨年4月に投入しました。これは競合他社に見劣りしない商品で、申し込みは非常に多いです。

     それでも家庭向けでまだ離脱が進んでいるのは、なっトクパックのメリットを訴求しきれていないからだと思います。当社としては、規制料金からなっトクパックに切り替えてもらえるよう、地道に魅力をアピールし続けることが家庭用回復のカギだと考えています。

    ── なっトクパックは競合に比べてどれくらい安いのですか。

    岩根 最大の競合相手である大阪ガスと比べると、使用量に関わらず大阪ガスよりも安くしています。電気の場合も、当社の規制料金(政府が認可する料金、ここでは「従量電灯A」)と比べて使用量に関わらず安くしています。一部の新電力が提供する特定の使用時間帯の料金に比べて高い場合はありますが、電気とガス合計の光熱費でみると大阪ガスに負けないし、どの新電力にも負けないと考えています。

     関電の試算では、電気・ガスの使用量が平均的な場合(電気は月260キロワット時、ガスは月31立方メートル)、なっトクパックの光熱費は、関電と大阪ガスの規制料金合計と比べて年間で約9900円安くなる。ただし、大阪ガスはガス式床暖房や家庭用燃料電池コージェネレーション(熱電併給)設備の利用者向けに大きな割引率を設定しており、割引率の大きいガス料金と比較すると、なっトクパックの競争力は弱まる。

    ── ガス小売りも1年遅れの17年4月に自由化されました。

    岩根 2年間でガス小売りの契約件数が100万件を超えました。ガス自由化が始まった時点で大阪ガスのガス供給の契約件数は623万件だったので、かなりの比率で当社が選ばれています。家庭用への進出では保安が課題でしたが、家庭用のLPG(液化石油ガス)を手掛ける岩谷産業と組んで、その不安を取り除きました。

    ── ガス事業はまだ数十億円の赤字です。

    岩根 ガス事業は収益の柱になるよう大きく育てる考えで、100万件は中間点です。19年度から3カ年の中期経営計画期間中に黒字化する狙いです。

    ── 原子力規制委員会は、原発に設置するテロ対策施設の完成期限の延長を認めないと判断しました。来年8月に高浜3号機の完成期限が来ますが、間に合いますか。

    岩根 一日も早く進行させることに全力を尽くす考えです。間に合うかどうか、現段階では言えませんが最大限努力します。

    ── 間に合わないと原発が止まります。料金や販売戦略に影響は出ませんか。

    岩根 3・11のあと、予測できないことが次々と起こりましたが、一つ一つ乗り越えて、社内の結束力が強まり、個々の社員の能力も上がりました。予測できないことに対応するために経営があると思っています。

    ── 原発は維持するのか、増やすのか減らすのか、リプレース(建て替え)するのか。どう考えていますか。

    岩根 2050年時点で温室効果ガスを80%削減するには、再生可能エネルギーだけでは無理だと考えており、一定レベルの原子力が必要です。そのため、どこかの時点でリプレースが必要だと考えています。数十年間、原子力と共生してきた地元との関係を考えると、新規立地よりもリプレース(が現実的)かなと考えています。

    ── 福井県は使用済み核燃料の県外搬出を求めています。

    岩根 福井県との約束はしっかりと守っていきます。さまざまな先と折衝していますが、デリケートな内容なので慎重に進める必要があります。

    ── 青森県むつ市にある中間貯蔵施設を活用する案が報じられました。

    岩根 当社として申し上げたことはないです。むつ市に持ち込むと決めた事実は一切ありません。

    (構成=浜田健太郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 燃料部門が長かったです。エネルギーとはグローバルな戦略物資だと意識しました。

    Q 「好きな本」は

    A 若い頃は司馬遼太郎ですね。『竜馬がゆく』はよく読みましたし、少し年齢がいってから城山三郎の『男子の本懐』です。

    Q 休日の過ごし方

    A 平日は車の移動が多くあまり運動ができないので、ランニングをしたり、水泳をしたり、日帰り温泉に行ったりしています。


     ■人物略歴

    いわね・しげき

     1953年生まれ。京都大学法学部卒業、76年関西電力入社、2007年執行役員、10年常務取締役、12年副社長を経て16年6月社長就任。大阪府出身、66歳。


    事業内容:電気事業、ガス供給事業、通信事業など

    本社所在地:大阪市

    設立:1951年5月

    資本金:4893億円

    従業員数:2万351人(2019年3月末、連結)

    業績:(19年3月期、連結)

     売上高:3兆3076億円

     経常利益:2036億円

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