教養・歴史書評

『ブレグジット・パラドクス 欧州統合のゆくえ』 評者・上川孝夫

     米中貿易摩擦とともに、英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる迷走が世界経済の先行きに影を落としている。2016年6月の国民投票で英国はEU離脱を選択した。その後、メイ首相はEUに正式に離脱を通告。離脱交渉(ブレグジット交渉)が開始され、18年11月に英EU合意がなった。しかし英下院がこの承認を否決、議会の迷走が続く中、メイ首相が辞任する事態に発展した。本書は、この離脱交渉を時系列に沿って詳しく論じたものだ。

     英国が離脱交渉の目標としたのは「主権の回復」である。EUの単一市場と関税同盟から離脱し、特に移民問題で揺れた、人の自由移動を撤廃する。その一方で物品・サービス貿易は可能な限り確保する。またEU司法裁判所の管轄権を排除することも課題だった。しかし、交渉では英国が徐々に劣勢となり、修正を迫られていく様子が描かれている。

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