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週刊エコノミスト Online ズバリ!地域金融

第22回 遠藤金融庁長官の2期目 個別行との対話重視へ=浪川攻

地域金融機関のトップ、役員レベルとの対話機会を増やす方針(遠藤俊英金融庁長官)
地域金融機関のトップ、役員レベルとの対話機会を増やす方針(遠藤俊英金融庁長官)

 金融庁の今年7月の定期人事異動が完了した。遠藤俊英長官による2期目が始動したわけである。地域金融の分野では、総合政策局の前秘書課長の石田晋也氏が新たに参事官に就いた。石田氏はかつて地銀を所管する銀行第2課長を務めた人物であり、実務経験は豊富と言える。さらに銀行第2課長は島崎征夫氏が留任して3期目を迎えた。こう見ていくと、地域金融に限れば、新体制は慣らし運転なしの本格稼働に即座に入るにちがいない。

 金融庁の新しい事務年度(7月~翌年6月)はいかなる行政となるのか。そのポイントを考えてみたい。もちろん、金融庁が地域金融機関に求め続けている「持続可能なビジネスモデルの構築」には何ら変わりはないだろうが、それを確固たるものに促していくための新機軸は当然ながら打ち出されていく。その一つが金融庁と個別銀行との対話の充実である。

 この点、金融庁は従来、地域金融機関のトップとの対話に注力してきた経緯がある。具体的には、個別行ベース、あるいは業界団体ベースの会合を通じて、意見交換を行ってきた。この取り組みは監督官庁の考え方と個別行の考え方が齟齬(そご)を来さないという意味できわめて重要と言える。

 金融庁は新事務年度において、この取り組みをさらに広げていく姿勢にある。頭取、社長というトップのみならず、経営方針を実践する立場にある役員レベルとも対話機会を作っていく考えだ。これによって、経営方針がいかに実施されているのかを把握するとともに、「個々の銀行が抱えている悩みや、あるいは、実践していくうえでの創意工夫などについて情報を共有していく」(金融庁関係者)という。

営業目標の撤廃も

 遠藤長官は常々、監督官庁が頭ごなしにあるべき論を投げかけるのではなく、きちんとその考え方を個別行に納得してもらうことが重要であると語ってきた。その意味でも、業務を担う役員レベルがいかに考え、事業展開を行っているのかについて対話を深めることは好ましい方向性と言っていい。

 実際には、毎月、数行の役員が参加し、一定のテーマを設定して意見交換し、情報を共有化していく方式が考えられている。

 その際、重要なことは、参加銀行の役員陣が忌憚(きたん)のない意見を述べるとともに、直面している問題と、それを解決するための施策を語り合うことにちがいない。

 地域金融の環境は引き続き厳しい状況にあるが、その一方では、ようやく、本格的なコスト削減策やデジタル化に挑む動きもみられるようになっている。事実上、営業目標の撤廃に向けて動き出した個別銀行も現れている。もちろん、マスコミが論じるほど、それらの実現は容易なことではないだろうが、デジタル化で事務コストを抜本的に削減できれば、営業目標を過剰化する必要はなくなるし、営業目標を廃することによって、営業現場の自主性を高めて、結果として、若手銀行員の育成が加速することも期待できるだろう。

 そのような取り組みに向けて、情報や問題意識の共有化が銀行同士、あるいは、銀行と監督官庁の間で深まることは有益である。今後、この対話政策がいかに進展するのかは、金融庁の新体制に関する大きな注目点といっておかしくない。

(浪川攻・金融ジャーナリスト)

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