欧州中銀の量的緩和再開を疑問視 預金者にしわ寄せの副作用も=熊谷徹
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欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が9月12日に発表した量的緩和策について、欧州の論壇では物価上昇率の引き上げのための実効性を疑問視する声が有力だ。
ドイツの保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ』(FAZ)は9月13日付電子版で「ドラギ氏は11月から国債買い取りを毎月200億ユーロの規模で再開し、民間銀行がECBに余剰資金を預ける際の金利をマイナス0・4%からマイナス0・5%に引き下げる方針を発表したが、これらの政策が物価上昇率の引き上げに貢献するかは未知数だ。むしろ預金者にマイナス金利の支払いを要求する銀行が増えるなど、副作用の方が大きいのではないか」と指摘した。さらに「ECBによる国債買い取りが許されるのは、本来深刻な経済危機の時に限られる。このため、国債買い取りはEU(欧州連合)法が禁じているECBの加盟国政府への融資に限りなく近い行為だという指摘もある」と報じた。
金融業界からも批判の声が強い。ドイツのニュース週刊誌『シュピーゲル』は、量的緩和策の発表に先立つ9月4日付の電子版でドイツ銀行のゼービングCEO(最高経営責任者)の「もはやECBは、景気後退に歯止めをかける有効な対策を持っていない。ECBが銀行に要求する預金金利をマイナス0・5%に引き下げても、効果は期待できない。逆に低金利政策は、長期的に見て加盟国の金融システムに壊滅的な打撃を与える。当行がマ…
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週刊エコノミスト
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