週刊エコノミスト Online2019年の経営者

編集長インタビュー 杉原章郎 ぐるなび社長

    ぐるなび社長 杉原 章朗
    ぐるなび社長 杉原 章朗

    ネット予約と飲食店支援で再び成長に

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 今年6月に楽天からぐるなびの社長に就任しました。2019年3月期は、最終利益が前期比82%減と苦戦しています。原因は何ですか。

    杉原 インターネット予約が主流になりつつある時に、時代の流れを読むことができませんでした。16年ごろまでの業績が好調な時に、他社に先駆けてネットを利用した予約に力を入れて、加盟飲食店にお客さんを送り込むことに注力するべきでした。他社はネット予約のシステムを店舗に無料で提供して契約を伸ばしたり、クーポンやキャンペーンを駆使して顧客を送り込んでいきました。動き出しが遅れてしまい、他社を追いかける立場になってしまいました。

    ── 業績回復のために杉原社長の下で変えていくと。

    杉原 業績を回復させるにとどまらず、もう一度成長軌道に乗せます。そのためには何を改善すべきか、優先順位を考える必要があります。

    ── 最も優先すべきは。

    杉原 まずはネット予約による送客数を増やすことです。今の若い人たちは電話予約をしたがりません。ネットに必要な情報がそろっていてその場で判断でき、予約まで完結できるのが当たり前。この流れは今後も続くでしょう。

    ── どうやって予約を増やしますか。

    杉原 まず予約画面の操作性を改善することです。例えば今のぐるなびの画面は、ユーザーが予約したいと思った時、その画面に予約ボタンがなくて必要な情報が一つ先の画面に行かないと見られないなど、感覚的に使いやすいとは言えません。画面も無駄に余白が多い。スマートフォンの限られた画面の中で、もっとレイアウトを緻密に作り込む必要があります。システムの進化に合わせて画面や操作性も進化させなければいけません。

     使いやすい仕組みを整えたうえで、週末など予約が入りやすい時間帯の予約枠を、飲食店から割り当ててもらえるよう努めます。1店舗でも多くぐるなびの予約管理システムを利用してもらえるよう我々の強みを伝えていきたいです。

    老舗のノウハウ

    ── その強みとは何でしょう。

    杉原 人的サポート体制が充実していることです。飲食店が抱える悩みや課題を解決するコンサルティングに強みがあります。スタッフの募集や育成、メニューの開発、繁盛店作りのプロセスなど、ぐるなびが長年蓄積してきたノウハウを生かした支援を行います。

     この業務支援をわかりやすくメニュー化して、ぐるなびから店に提供するサービスを再設計する必要があります。

    ── 楽天との提携も重要ですね。

    杉原 18年7月に資本業務提携し、同年10月には楽天の会員IDとぐるなびの会員IDを連携させました。楽天IDでぐるなびを使う人は日々増えています。ぐるなびの対象飲食店にネット予約して来店すれば楽天のポイントがたまります。いずれは全ての対象飲食店で楽天ポイントでの支払いができるようにするなど、利便性をさらに向上させていきます。

    楽天との連携強化

    ── ぐるなびは他社に比べて口コミが少ないとの声があります。

    杉原 口コミが少ないという指摘があることは承知していますが、口コミをどう活用するべきかはよく考える必要があります。もちろんユーザーからの評価は大切ですが、必要以上にネットの口コミに左右されるのも良くないと思います。ネットではユーザー目線が重視されがちですが、必ずしもそれだけが正解ではないはずです。

    ── 外国人観光客への対応は。

    杉原 訪日外国人向け観光情報サイト「LIVE JAPAN」に注力します。月間370万人が閲覧する日本最大級の訪日旅行者向けサイトで、ぐるなびと鉄道、航空会社などで運営しています。東京、北海道、関西版に続き、東北版の掲載も始めました。

     食に関する情報はぐるなびが、ホテル宿泊先の情報は楽天と連携することでインバウンド需要を取り込みます。

    ── 今期の決算は赤字予想です。黒字化と今後の見通しは。

    杉原 ネット予約サービスを強化して来期の黒字化を目指します。あまり数字の話をしすぎると広報に怒られてしまいますが……(笑)。そのためには、楽天の会員で現在一つのサービスだけしか使っていない人に、ぐるなびも使ってもらうように誘導することが重要です。楽天会員で一つのサービスとぐるなびを併用している人は全体の14%ですが、3年以内にこの比率を50%に持っていくことが目標です。

     ネット予約で前期比7割増を目指し、数年内にナンバーワンの地位を取り戻します。

    (構成=吉脇丈志・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 楽天のサービスシステム開発の統括者として、トライ・アンド・エラーを繰り返していました。失敗もありましたが、その経験が今役立っています。

    Q 「好きな本」は

    A 瀧本哲史の『僕は君たちに武器を配りたい』、渡辺和子の『置かれた場所で咲きなさい』です。

    Q 休日の過ごし方

    A スポーツ観戦、特に野球が好きです。日課は犬の散歩です。


     ■人物略歴

    すぎはら・あきお

     1969年生まれ。94年慶応義塾大学総合政策学部卒業、インターネットサービス会社起業を経て、97年楽天の創業に参加し、同年4月エム・ディー・エム(現楽天)に入社。2000年楽天ブックス社長、12年楽天取締役常務執行役員。19年6月に楽天を退職し現職。広島県出身。50歳。


    事業内容:飲食店等の情報提供サービス、業務支援サービス

    本社所在地:東京都千代田区

    創業:1989年10月

    資本金:23億円

    従業員数:1783人(2019年3月末、連結)

    業績(19年3月期、連結)

     売上高:327億円

     経常利益:12億円

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