週刊エコノミスト Online2019年の経営者

編集長インタビュー 大場康弘 SOMPOひまわり生命社長

    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都新宿区の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都新宿区の本社で

    病気を予防する健康応援企業へ

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 万一の時に給料のように毎月定額を受け取れる収入保障保険が好調です。

    大場 2018年4月に出した収入保障保険の新商品が18年度に販売件数で業界首位となりました。旧商品と比べて4倍以上の約11万件、保険料収入で100億円を超えました。加入後にお客様の健康状態を確認し、血圧、心拍数、肥満度を測るBMIの三つで数値が改善すれば、掛け金が安くなり、過去にさかのぼって保険料も一部を返す仕組みの保険です。

    ── 認知症でも新しい商品を出しました。

    大場 昨年10月に業界で初めて軽度認知症(MCI)も保障する認知症保険を出しました。MCIは適切な予防対策を行うことで回復したり、認知症の発症を遅らせる可能性があります。認知症になる一歩手前で保険金を支払い、予防に役立つ保険です。MCIになったらやった方がいいと言われる脳トレーニングをスマートフォンのアプリで提供するなど支援サービスも用意しています。

    ── 保険(インシュアランス)と健康(ヘルス)を融合した「インシュアヘルス」を掲げています。どういう狙いですか。

    大場 生命保険は万が一への備えです。一方、健康はその対極にあります。これまでの保険会社は、主に備えを提供してきましたが、現在の医療は、成人病の予防やがんの早期発見などテクノロジーが進化しています。これからは健康の維持にどう貢献できるかを考え、備えと予防の双方を提供していきたいと考えています。こうしたインシュアヘルスで売り上げの8割を目指します。

    ── 新卒採用で「たばこを吸わない人」という条件を付けて話題になりました。

    大場 20年4月入社の新入社員から喫煙する人は採用しない方針としました。社内でも18年から就業時間中は禁煙とし、19年4月から執行役員以上は禁煙承諾書にサインさせています。

    ── たばこを吸っている優秀な社員もいるのでは。

    大場 確かに社内の喫煙者からは抵抗がありました。ですが、「健康応援企業」を自任している私たちがたばこを吸っているようではだめだと思い、16年に週1日の禁煙デーをつくり、17年に社内の喫煙所を廃止するなど段階的に進めました。新卒採用については、批判も覚悟していましたが、意外とありませんでした。

    ── 社員にウエアラブル(身に着ける)端末を配って、健康データを取っているそうですね。

    大場 2900人の社員に、消費カロリーや歩数、心拍数、睡眠の深さなどを測れる米フィットビット社の腕時計型の端末を配り、16年からデータを取っています。1日の歩数が1万歩を超える社員が増え、社員の健康増進に役立っています。このデータを使って、保険商品開発も進めていきます。端末の価格は1万~3万円。将来はお客様にも配りたい。

    Photo 武市公孝:東京都新宿区の本社で
    Photo 武市公孝:東京都新宿区の本社で

    ── IT(情報技術)の拠点、米シリコンバレーやイスラエルの企業と提携したそうですね。

    大場 シリコンバレーではニューロトラックという認知症の早期発見・予防のアプリを開発した会社と提携しました。スマホの間違い探しのゲームで眼球の動きを分析し、認知症の進行度合いを計測したり予防する技術を持った会社です。来年初めにも認知症保険の顧客にこのアプリを提供します。

     イスラエルは、ビナー社というセンサー技術の会社で、スマホのカメラで顔を撮影するだけで心拍数などからストレス度合いを測定する技術を持った会社です。この技術を活用した保険などを考えています。

     来年1月にはラスベガスで開かれる世界最大の家電見本市CESに日本の保険会社で初めて出展し、提携の成果を披露するとともに、将来提携する企業も探したいと考えています。

    ── 超低金利が続くなか、運用の状況は。

    大場 厳しいですが、当社は保障性商品が74%に対し、貯蓄性商品が26%の比率。大手生保のように貯蓄性商品のために運用成績を上げなければならないというプレッシャーは比較的軽い。基本は安定運用で、国内の債券が中心です。

    ── 10月に社名変更しました。

    大場 11年に損保ジャパンひまわり生命と日本興亜生命が合併し、NKSJひまわり生命保険となりましたが、社名が長く、お客様にも社名記入などで手間をかけるため、10月1日にSOMPOひまわり生命保険としました。

    ── SOMPOグループとしての強みはどう生かしますか。

    大場 グループの損害保険を含めた顧客は約2000万人。3分の1程度が自動車保険ですが、これから高齢化が進むと免許返納が増えるし、介護や認知症が課題になります。そこに当社は適切な保険を提供できるし、グループには介護施設を運営する会社もあり、2万人以上が入居しています。横への展開ができるのが強みです。

    (構成=金山隆一・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 安田火災の鹿児島県の支店で損保営業マンとして一心不乱に働いていました。

    Q 「好きな本」は

    A 柳井正さんの『経営者になるためのノート』、村上春樹さんの『中国行きのスロウ・ボート』の短編「午後の最後の芝生」です。

    Q 休日の過ごし方

    A 社長就任以来やめていましたが今夏は家内と立山に行きました。本格的な登山に備え5キロ程度のウオーキングもしています。


     ■人物略歴

    おおば・やすひろ

     1965年生まれ。鹿児島県立川内高校卒業、88年慶応義塾大学商学部卒業、安田火災海上保険入社、2014年7月NKSJひまわり生命保険(現SOMPOひまわり生命保険)取締役執行役員などを経て、18年4月から現職。鹿児島県出身。54歳。


    事業内容:生命保険

    本社所在地:東京都新宿区

    設立:1981年

    資本金:172億5000万円

    従業員数:2916人(2019年3月末)

    業績(19年3月期)

     経常収益:4951億1100万円

     経常利益:265億8600万円

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