週刊エコノミスト Online2019年の経営者

編集長インタビュー 青野慶久 サイボウズ社長

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都中央区のオフィスで
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都中央区のオフィスで

    グループウエアで働き方を変える

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 2018年の12月期に売上高が初めて100億円を突破しました。好調の要因は。

    青野 業績にはそれほどこだわっていませんが、ビジネスモデルの転換を図ったのが大きいと考えています。創業以来、スケジュールやメール、会議室予約などが一元管理できる、いわゆるグループウエアと呼ばれるソフトを開発・販売してきましたが、11年末からそれをネット上で提供するクラウドサービスも開始しました。

     それまではソフトを一つ一つ販売する売り切り型のモデルでしたが、クラウドでは月額利用料を設定した課金型のモデルにしたことで、契約に応じて売り上げが積み上がるようになったわけです。

    ── 契約数も伸びている。何が評価されているのでしょう。

    青野 人手不足で、どの職場も、仕事の効率を上げなければという圧力が高まっています。介護や育児で、時短勤務や自宅などから遠隔で仕事をする人も増えました。仕事をシェアしなければ、協力的に働けません。働く上でのインフラとして、認知されてきたと感じます。

    ── 情報共有ソフトやチャット(会話)アプリなど、他にも選択肢はありますが、他社の商品にない強みは。

    青野 現在の看板商品は、業務に必要なアプリケーションをクラウド上で利用者が簡単に作成できる「キントーン」というサービスです。法務部門の契約書管理、カスタマー部門のクレーム管理……と用途はさまざまで、全国で一日平均約1660個ものアプリが作られています。

     メールはこの25年間、ビジネスマンのスタンダードツールでしたが、宛先に入れた人にしか届かないため、情報格差を生んできました。それでようやく「チャットの方が便利じゃないか」という段階になった。社会が私たちの領域に近づいてきたという印象です。ただ、メールやチャットでコミュニケーションの部分だけを共有しても、あまり便利ではありません。グループウエアを使えば業務全体を情報共有できるわけです。

    離職率28%からの脱却

     創業8年で社長に就任。事業買収など拡大路線を推し進めて競争を強化させたことで社内の雰囲気が悪化し、離職率は28%に達した。そこで図ったのが「ブラック」から「ホワイト」への風土転換だった。事業をグループウエアに一本化し、チームワークと長く働ける環境作りを最重視。離職率は4%まで下がり、今や働き方改革で業務改善を果たした先駆者として企業研修や講演に引っ張りだこだ。

    ── 「100人いれば100通りの働き方ができる会社を目指す」と言ってきましたね。

    青野 人口700人の山梨県小菅村で、仕事をしている人もいますよ。副業する人も増えていますが、本人が秘密にしたいというのでない限り、別の仕事のスケジュールも登録してもらいます。「あの人は、この時間は副業だな」と分かっていれば、お互い気持ちよく働けるわけです。

    ── 米国に再進出しました。1度失敗していますが、狙いは。

    青野 米国は最もレベルの高い市場です。米国で成功しなければグローバルで成功することはないと考えていますが、世界中の企業が集まっているわけで、シェアを1%取るのも至難の業です。

     仕事などで使うソフトの仕様は国ごとの文化に依存します。スケジュール管理ソフトを英語化してアメリカに持って行ったら「人にスケジュールを見られるなんて嫌だ」と言われました。国ごとに会計基準も異なり、ソフトのインフラのレベルにまで降りていかないと、グローバルでやるのは難しい。現地のパートナーと組んでいかに現地向けのサービスに仕立てるかだと考えています。

    ── 勝算は。

    青野 今のところ勝ちようがありません(笑)。日本人がアメフットにチャレンジするようなものですから。でも、チャレンジしない限り自分たちの成長も見込めません。どこが負けているのかが見えれば、そこを詰めていくことができます。長期戦ですね。

    ── 「選択的夫婦別姓」の法整備を求める訴訟の原告としても知られています。

    青野 原告を引き受けたら、思っていた以上の反響がありました。裁判を進めながら、国会でのロビー活動もしています。唯一反対している自民党にも賛成者は数多く、もう一息だと思っています。

     日本の「いかに一様であるか」という価値観は行き詰まりを迎えています。名字も、変えたい人は変えればいいし、変えたくない人は変えなくていいはずです。選択肢を増やし、多様な個性を生かす方向にマインドチェンジできるかどうか。ここを変えられれば、日本に今あるほとんどの問題が解決すると思っています。

    (構成=市川明代・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 33歳で社長になって、そこから2年間は地獄でした。自分は会社を大きくすることに関心がないのだと気付いて、買収した会社も売却して、グループウエアに注力しました。

    Q 「好きな本」は

    A 今一押しはフレデリック・ラルーの『ティール組織─マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』。僕のイメージしていた社会観や世界観が非常にクリアに明文化されています。

    Q 休日の過ごし方

    A 家事育児です。


     ■人物略歴

    あおの・よしひさ

     1971年生まれ。愛媛県立今治西高校、大阪大学工学部卒業。松下電工(現パナソニック)を経て、97年8月サイボウズ設立。2005年4月から現職。18年1月より、チームワークや働き方改革のメソッドを提供する新事業部・チームワーク総研の所長も務める。愛媛県出身。48歳。


    事業内容:グループウエアの開発、販売など

    本社所在地:東京都中央区

    設立:1997年

    資本金:6億1300万円

    従業員数:659人(2018年12月末現在、連結)

    業績:(18年12月期、連結)

     売上高:113億300万円

     営業利益:11億300万円

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    2月4日号

    AIチップで沸騰!半導体第1部 世界の開発最先端14 GAFAも開発に乗り出す AIチップの8兆円市場 ■津田 建二/編集部18 Q&Aで分かる AIチップ ■編集部/監修=本村 真人21 インタビュー ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP) 山本達夫 社長「推論用AIチップのコア開 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ PR

    最新の注目記事

    ザ・マーケット