週刊エコノミスト Online2019年の経営者

編集長インタビュー カインズ社長 高家正行

    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 埼玉県本庄市の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 埼玉県本庄市の本社で

    DIYを文化として根付かせたい

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 2013年2月期から6期連続の増収です。好調の原因は。

    高家 一番はカインズでしか買えないプライベートブランド(PB)商品の充実です。土屋裕雅会長が社長を務めていた今年3月までの間、自社で企画したPB商品の充実に力を入れ、現在では売り上げの4割弱をPB商品が占めるまでになりました。調理で使うラップを誰でも簡単に切れるケースや、収納時に立つほうきなど、ちょっとしたアイデアと洗練されたデザインを併せ持つ商品を開発しています。

    ── ホームセンター市場の現状は。

    高家 小売業の売り上げは日本の人口やGDP(国内総生産)に比例します。ホームセンター市場はおよそ4兆円とここ数年ほぼ横ばいで、現在は業界内でシェアを奪い合っている状況です。そうしたシェアの奪い合いはやめ、私たちが新しい価値を作って市場を広げていく必要があります。

     当社は新規出店の効果で増収は達成しています、既存店ベースの売り上げは前年比横ばいかわずかに減少。東北や九州などまだ出店余地のある地域は多いですが、新規出店のペースをいったん抑え、既存店の価値を向上させる計画です。来客数は増えていなくとも、店内の施設を工夫して顧客の買い上げ点数や来店頻度を上げたいと思っています。

    ロッカーで商品受け取り

    ── DIYが体験できる工房やカフェなど店内の施設が充実しています。

    高家 誰でも気軽にものづくりが体験できる「カインズ工房」は、全219店舗のうち約40店舗に展開しており、現在までおよそ10万人にDIY体験を提供してきました。今年11月にはさらにDIY体験100万人を目指すプロジェクトを打ち出し、パートナー企業と製作メニューを共同開発するなど、ワークショップを充実させていきます。

     カフェは店舗の「一等地」に当たる、入り口のすぐ近くに設置しています。日々の暮らしを提案するため、ゆっくりくつろいで店内を見てもらうためです。カフェのメニュー開発もすべて自社でやっており、その地域の食材や季節ごとのメニューを開発しています。

    ── 特にDIY体験には注力しているようですね。

    高家 DIYといえば日曜大工のイメージがありますが、毎日の暮らしを自分らしく作ることすべてをDIYと捉えています。日本は欧米と比べるとDIYが文化として根付いていません。「カインズ工房」ではDIYが趣味の上級者用メニューだけではなく、棚や貯金箱などをキット化し、簡単な道具で組み立てて自分でペイントすれば出来上がるような初心者向けのメニューもあります。特に女性や子どもに向け、暮らしを自らの手で作る楽しさを提案したいですね。

    ── EC(電子商取引)への取り組みは。

    高家 買い物のわずらわしさを解消するツールとして、広い店内でも商品の場所がひと目で分かるスマートフォン用の検索アプリを開発しました。来店する前に在庫検索もできます。また、あらかじめスマートフォンで自分の部屋を撮影しておき、売り場のインテリア商品と合成して表示できるサービスも一部店舗で実験的に導入しました。

    ── アマゾンなどEC大手にはどう対抗しますか。

    高家 実店舗でもネットでも、結局は欲しい商品があるかどうか。どちらからでも買えるよう、環境を整備しておくことが大事ですね。また、ネットに「対抗する」のではなく、実店舗とネットの垣根をなくすことが重要だと考えています。12月からは、ネットで注文した商品を店舗入り口の専用ロッカーで受け取れるサービスをホームセンターでは初めて開始するんですよ。

    ── 自宅まで配送してもらったほうが便利なのでは?

    高家 自宅へ配送すると送料がかかるうえ、配送の時間帯に自宅にいなければなりません。店舗の専用ロッカーなら自分の好きな時に受け取ることができ、米国でもネットで注文して店舗で受け取るスタイルが主流になっています。グループのどの店舗でもいずれ、専用ロッカーで受け取れるようにしたいですね。

    ── 高家社長は銀行、コンサルティング会社の出身で、小売業は未経験です。

    高家 35歳で銀行から転職する際、どの会社でも通用するプロの経営者を目指すと決め、コンサルタントを経て、40代で経営の現場に出ました。確かに小売業は素人ですが、業種の違いを意識したことはありません。小売業はこのままでは人口減少で苦しくなっていきます。会社が右肩上がりで成長してきた今だからこそ、改革に向けた一歩を踏み出す必要があると考えています。

    (構成=吉脇丈志・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 経営者になりたいなと思い始めた時期です。A.T.カーニーであらゆる業種のコンサルティングを担当し、勉強していました。

    Q 「好きな本」は

    A 若いころは中村天風の本。最近は歴史書や伝記を読みます。

    Q 休日の過ごし方

    A 趣味はテニス。クラブに所属しており家族でもやります。


     ■人物略歴

    たかや・まさゆき

     1963年生まれ。私立麻布高校卒業、85年慶応義塾大学経済学部卒業、三井銀行(現三井住友銀行)入行、99年A.T.カーニー、2004年ミスミ(現ミスミグループ本社)に転じ、08~13年ミスミグループ本社社長。16年カインズに移り取締役。17年副社長、19年3月から現職。東京都出身。56歳。


    事業内容:ホームセンターの運営、生活用品等の企画、製造、販売

    本社所在地:埼玉県本庄市

    設立:1989年3月

    資本金:32億6000万円

    従業員数:1万1477人(2019年2月末現在)

    業績(19年2月期単体)

     売上高:4214億円

     営業利益:298億円

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