週刊エコノミスト Online2019年の経営者

編集長インタビュー 小川啓之 コマツ社長兼CEO(最高経営責任者)

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都港区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都港区の本社で

    建機デジタル化の先駆者、部品に強み

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 2018年度は過去最高の業績でしたが19年度は通期営業利益予想を580億円、下方修正しました。

    小川 コマツが強い東南アジアやインドで軒並み選挙があり、インフラ関連の予算執行が停滞したことで、建築や土木に使われる一般建設機械の販売に影響が出ました。ただ、影響は一過性とみており第4四半期(20年1~3月)には回復すると期待しています。

    ── 資源採掘に使われる鉱山機械はどうですか。

    小川 インドネシアを中心に発電用石炭の価格下落が継続して開発投資が冷え込み、採掘用の鉱山機械の販売が厳しいです。ただ、それ以外の鉱物だと金は高値で推移していますし、鉄鉱石や銅の需要も堅調で、石炭も製鉄原料用は高値で安定しています。英豪リオ・ティントや英アングロ・アメリカンなどの鉱山メジャーの開発投資は堅調に推移しています。当社は無人で運行するダンプトラックを世界で初めて市場投入(08年商用化)。鉱山メジャーは無人ダンプを中心に投資に積極的で、当社の製品が評価されています。

    ── 北米や中国、日本の建機需要はいかがですか。

    小川 北米は好調です。シェールガス・オイルの開発に加えて、建機需要を左右する住宅着工件数も月間120万~130万戸くらいで安定しています。代理店に話を聞くと今年は大丈夫だろうけど来年は需要がピークアウトじゃないかという見方もあります。

     中国の売上比率は全体の6~7%程度なので、経済減速の直接の影響は大きくないですが、中国が冷え込むと周辺国に波及します。日本は堅調です。東京五輪に加え都心の再開発もあるし、自然災害がこれだけ多くなると(土木などの)需要は増えてきています。

    部品が競争力の源泉

    ── 米キャタピラーや日立建機などの競合と比べたコマツの強みとは。

    小川 キーコンポーネント(主要部品)を自社で開発し内製化していることです。エンジン、トランスミッション、油圧ポンプ、モーターなどが該当し、これが建機の性能を左右する決め手です。自社製なので部品の寿命予測が可能で、顧客に最適なタイミングでオーバーホール(分解・検査・修理)の提案ができます。キャタピラーは従来、自前で基幹部品をそろえていましたが、新しい建機をみると一部は(部品の)購入に変えています。日立建機だとエンジンはいすゞから調達しています。中国メーカーは、主要部品はほとんど外部からの調達です。エンジンはいすゞや三菱重工業、旋回モーターやバルブは川崎重工業、モーターはKYBから買っています。

    データ分析で課金狙う

     コマツは建機にGPS(全地球測位システム)を搭載し、稼働状況を把握する「コムトラックス」を導入。数十万台の機械の稼働状況、燃料の残量などがオフィスでわかるようになった。ただ、IoT(モノのネット化)技術の普及で他社も同様の取り組みを進めている。

    ── 建機のデジタル化で先行してきましたが、今後リードを保つことはできるのですか。

    小川 現在のコムトラックスは開始から20年近くたったので、現在新しいシステムを開発中です。来年の早い時期に投入しようと考えています。現行ではデータの更新頻度が1日1回ですが、新しいシステムは更新頻度がほぼリアルタイムになり、データ量も飛躍的に増えます。ただ、建機はまだICT(情報通信技術)に対応していない車両のほうが圧倒的に多いので、まずは対応車両の数を増やすことがデジタル化を進めるために必要でしょう。

    ── ユーザー側の利点とは。

    小川 コムトラックスは当社の代理店が顧客にソリューション提案することが主な用途です。建機ユーザー向けには「スマートコンストラクション」というビジネスを15年から始めています。工事現場で日々、地形を掘ったり切ったりしていますが、毎日ドローンを飛ばして地形がどう変化しているのかデータを収集して、翌日に必要な作業を示すシミュレーションと工程管理に使うことができます。

    ── データの分析はコマツ独自ですか。

    小川 そうならないとビジネスになりません。このシステムを使うと、現場作業の効率化だけでなく、工事の入札から完成までの期間を大幅に短縮することができます。昨年9月から2カ月間ドイツで「概念実証」のテストを行ったところ、入札から落札までの期間を以前の90日から30日に、施工工事も630日から440日に短縮するという結果が得られました。建機の販売に加えてこうした効果をライセンス料として課金するビジネスを広げていこうと考えています。

    (構成=浜田健太郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんな仕事をしていましたか

    A 入社して配属された川崎工場で生産技術を担当していましたが、工場閉鎖で栃木の真岡工場に移りました。真岡では他の工場からのリストラの受け入れも経験しました。

    Q 「好きな本」は

    A 司馬遼太郎の『坂の上の雲』です。東郷平八郎が「連合艦隊解散の辞」を述べる場面が大好きです。

    Q 休日の過ごし方

    A 趣味はゴルフです。温泉に行くのも好きです。


     ■人物略歴

    おがわ・ひろゆき

     1961年生まれ。清風南海高校卒業、京都大学大学院冶金工学科修士課程修了。85年4月コマツ入社、2010年4月執行役員、常務、専務を経て19年4月から現職。大阪府出身、58歳。


    事業内容:建設・鉱山用機械などの製造、販売

    本社所在地:東京都港区

    設立:1921年5月

    資本金:683億円(連結)

    従業員数:6万1908人

    業績:(2019年3月期)

     売上高:2兆7252億円

     営業利益:3978億円

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    6月16日号

    コロナデフレの恐怖14 サービス業に「デフレの波」 失業増で負のスパイラルも ■桑子 かつ代/市川 明代17 市場に問われる開示姿勢 ■井出 真吾18 図解デフレ大国ニッポン ■編集部19 デフレ圧力は過去にない水準に ■永浜 利広20 コロナで「上がった下がった」ランキング ■編集部21 インタビ [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事

    ザ・マーケット