週刊エコノミスト Online2020年の経営者

編集長インタビュー 本名均 イーレックス社長

Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都中央区の本社で
Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都中央区の本社で

バイオマスで再エネ発電の自立狙う

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── イーレックスとはどんな会社ですか。

本名 発電と電気の販売を手掛ける新規参入の電力会社(新電力)です。特に植物などから生み出される資源を燃料とする「バイオマス発電」に注力していることが特徴です。自前の発電所で燃やす燃料は、ヤシの実の殻を加工せずに使う「パームヤシ殻」と、木くずなどを粒状に固めた「木質ペレット」の2種類があります。燃やせば二酸化炭素(CO2)を排出しますが、植物は成長の過程でCO2を大気から吸収するので、トータルでみるとCO2の量は変化しません。したがってバイオマス発電は地球温暖化の原因になるCO2の排出量を増やさないのです。

── なぜバイオマス発電だったのでしょうか。

本名 CO2を出さない再生可能エネルギー(再エネ)としてほかに太陽光発電や風力発電などがありますが、雨が降り、風が吹かなければ電気を作ることはできません。バイオマス発電は燃料さえ確保できれば100%稼働することができるので、需要家に販売しやすいという利点があります。

── ヤシ殻や木質ペレットはどのように調達しているのですか。

本名 ヤシ殻はパーム油の生産で余った殻が原料で加工が必要ありません。インドネシアやマレーシアからの輸入が中心です。効率的に集積する港湾が整備されていないといった課題がありますが、開発余地はあります。木質ペレットは加工が必要で、質量当たりの燃焼カロリーも少し高いので、木質ペレットのほうが値段は高くなります。北米や東南アジアからの輸入が多いです。

支援制度には頼らない

 政府は2012年7月に太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスによる再エネで発電した電気を国が定めた価格で一定期間、大手電力会社に買い取りを義務付ける「固定価格買い取り制度(FIT)」を開始。再エネのコストは、一般家庭を含む電気の利用者が負担する仕組みだが、その負担額は18年度には2・3兆円に達している。

── 燃料の価格は安定的に推移しているのですか。

本名 FITではバイオマス発電は1キロワット時当たり24円で大手電力が買い取ってくれるので、それで採算が取れるような燃料価格で事業を行うことが一般的です。しかしそれでは燃料の輸出国へ国民のおカネが多く流れてしまいます。当社ではFITによる国民負担が限界に来ていると考えており、FITを使わない方法でバイオマス発電の拡大を検討し、その方向にかじを切ろうと決めたのです。

── FITに頼らなくても利益を出せるのですか。

本名 発電所を大型化して固定費を下げる必要があります。現在、稼働中もしくは建設中の発電所5基(合計出力26・9万キロワット)はFITを前提とした発電所ですが、30万キロワット規模の「メガバイオマス」を計画しています。24年運転開始を目指し現在、候補地を選定中です。同様の規模をもう1カ所作ろうと考えています。ある自治体から立地要請もきています。

「CO2出さない」は価値

 燃料の調達価格も下げないといけません。木質ペレットは、従来は調達していなかった地域、例えば日本から近くて輸送費が安いロシアなどに輸入先を広げることを検討しています。カンボジアでは水力発電所の建設・運営にも参画していますが、同国にはバイオ燃料が大量にあるので、調達拡大につなげようと考えています。バイオマス燃料はすでに外販を始めており、今後はもっと拡大する考えです。

── 利用者からみてFITに頼らない電気は割高になる可能性がありますよね。それでも買うメリットはどこにあるのですか。

本名 実は、FITの支援を受けていると法律によりCO2フリー(二酸化炭素を排出しない)を掲げることはできません。温暖化問題に対応する社会的な要請から大手ゼネコンや有名ブランド企業などから販売してほしいという要望が来ています。米アマゾンなど世界的にもCO2フリーを宣言する会社が増えており、そうした傾向は日本でも増えてきています。

── 電力小売り自由化が始まってもうすぐ4年。成果はどうでしょうか。

本名 現在の新電力の販売シェアは16%ですが、拡大余地はあると思います。電力供給の制度も変わります。エネルギー供給構造高度化法に基づき、一定規模の販売電力量を持つ事業者は、30年度に供給量の44%を(再エネや原子力など)CO2フリーの電気にする必要があります。達成できなければ、他の事業者からの調達が求められるので、メガバイオマスはそうした意味でも競争力を持つようになるのです。

(構成=浜田健太郎・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 石油会社にいて新規事業の開拓を任されました。太陽光発電や燃料電池などを手掛けました。朝から晩まで仕事に没頭していました。

Q 「好きな本」は

A 論語が好きで『男の論語』(童門冬二)をよく読み返します。あと『アインシュタインは語る』(アリス・カラプリス)。人間に対する好奇心や愛情が印象的です。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフか、妻と映画を見たり散歩したりです。


 ■人物略歴

ほんな・ひとし

 1948年生まれ。東京都立明正高校、73年慶応義塾大学法学部卒業、同年4月東亜燃料工業(現JXTGエネルギー)入社。2000年4月イーレックス副社長に就任、16年6月から現職。新潟県出身、71歳。


事業内容:電力小売り、バイオマス発電事業など

本社所在地:東京都中央区

設立:1999年12月

資本金:51億円

従業員数:145人(2019年3月現在)

業績:2019年3月期

 売上高:658億円

 営業利益:47億円

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

2月14日号

どうする?どうなる?日銀大検証16 岸田政権「インフレ抑制」へ 10年ぶり総裁交代で緩和修正 ■浜田 健太郎19 インタビュー 軽部謙介 帝京大学教授・ジャーナリスト 日銀が甘くみた内閣の力 「安倍1強」に内部ひょう変21 「 ガラパゴス」日銀 市場機能をマヒさせた「看守」 低金利慣れの財政に大打撃 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事