週刊エコノミスト Online2020年の経営者

編集長インタビュー 寺畠正道 JT社長

    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都港区の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都港区の本社で

    喫煙者と非喫煙者の共存を目指す

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 加熱式たばこの市場はどういう状況ですか。

    寺畠 2014年に他社が加熱式たばこを日本に導入しましたが、我々は加熱式が日本でそんなにヒットすると思わず、あまり力を入れていませんでした。当時は紙巻きたばこの「ナチュラルアメリカンスピリット」が伸びていて、そちらに注力していました。

     しかし、16年、17年で他社の加熱式製品が爆発的に伸びて、日本のたばこ市場における加熱式のシェアは現在22%にまで伸びています。ニーズは確実にあったのに、ユーザーの声を拾い切れていなかったことは大きな反省点です。我々も18年から全国で加熱式製品を出し、新しい物に興味を持つ層にある程度行き渡ってきたと思っています。

    新カテゴリーを攻める

    ── 同じ加熱式でも、米フィリップモリスの「アイコス」、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「グロー」に対して、JTの「プルーム・テック」は「吸いごたえがない」という声を聞きます。

    寺畠 もともと日本市場は、低ニコチン、低タールの軽いたばこがよく売れます。そのため、18年に出した「プルーム・テック」は30度の低温加熱型で、軽い吸い心地にしました。重いたばこを吸う人には吸いごたえはないかもしれないが、対象となる層が少し違います。

     19年に出した「プルーム・テック・プラス」は40度にして吸いごたえが少し強くなりました。一方、競合製品は240〜350度まで加熱するので温度帯が異なります。そこで同年に発売した「プルーム・エス」は、200度まで加熱する高温加熱型で、少し“重め”の製品にしました。競合製品に対抗する位置づけです。

     また、他社は3世代、4世代目の製品ですが、当社はまだ第1世代の製品です。これから改善を進めて、満足度を上げていきます。

    ── 紙巻きたばことの違いは。

    寺畠 高温加熱型のほうが紙巻きに近い。しかし、低温加熱型は、においを紙巻きと比べて99%以上削減し、健康懸念物質がほとんどないなどのメリットがあり、日本では一定の需要があるとみています。低温加熱型は他社がやっていないので、当社はパイオニアとして新しいカテゴリーを作っていきます。

    ── 主力の紙巻きたばこの展開は。

    寺畠 日本市場は、おそらく加熱式が増えていき、紙巻きのトータルの本数は減っていく。その中で現在6割以上あるシェアを維持、あるいは上げていきます。世界市場では当社は3位で、上位2社とはまだ差があります。これからその差を縮めて、将来的にはナンバーワンを目指します。そのために成長が期待できる新興市場や、まだ参入できていない市場に投資をしています。

    ── 注力している国や地域は。

    寺畠 最近ではアジア、アフリカ、南米です。フィリピンやインドネシア、エチオピア、スーダンなどでは現地のたばこ会社を買収しました。スーダンでは7割、タンザニアでは9割以上のシェアがあります。現在、海外の売り上げが6割強ですが、日本よりも海外のビジネスの成長スピードが速いので、この比率は増えていくと思います。

    ── たばこ以外では、冷凍食品などを扱っています。

    寺畠 うどんはトップシェアを獲得しています。また、電子レンジで温めるパックご飯も2位で、相当伸びています。米やうどんなど主食領域は我々が強い分野で、安定的にビジネスができています。

    吸える場所を増やす

    ── 今後の展望は。

    寺畠 改正健康増進法が4月に施行され、たばこを吸える場所が少しずつ減っていく。しかし、加熱式であれば、飲食しながら吸える場所が残る可能性もあります。飲食店オーナーなどにしっかりと営業をかけて、加熱式が吸える場所を増やしていきます。

    ── 税制改正で地方たばこ税を公共喫煙場所の設置に使うという要望が出ています。

    寺畠 今回の税制大綱にそういう文言が入ったことは、ありがたいことです。我々は喫煙者と非喫煙者が共存できる社会を目指しています。そのためにはたばこを吸う環境を整えていく必要があり、行政にも働きかけて喫煙所をつくる取り組みを進めています。

    ── 寺畠社長は生え抜きですが、JTは歴代、財務省出身者が社長になることが多かった。後継者問題をどのように考えていますか。

    寺畠 当社は上場企業ですし、グローバルに幅広くビジネスを展開しています。スピード感を持って、いろいろな手を打たなければいけないので、たばこ業界に精通した経営者が経営していくことがあるべき姿だと思います。

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんな仕事をしましたか

    A RJRナビスコ買収に関わって成功させたことに尽きます。当時は日本企業として最大の海外企業の買収でしたし、今の私のベースを作りました。

    Q 「私を変えた本」は

    A ブライアン・バロー&ジョン・ヘルヤーの『野蛮な来訪者』です。KKRによるRJRナビスコ買収のきっかけが書いてあり、経営者のあり方やM&Aの背景を学びました。

    Q 休日の過ごし方

    A 時間がとれたときは、釣りに行きます。


     ■人物略歴

    てらばたけ・まさみち

     1965年生まれ、清風南海高校卒業、89年京都大学工学部卒業後、日本たばこ産業(JT)入社。2005年秘書室長、08年経営企画部長に就任。その後、執行役員、JTインターナショナル副社長・副CEOなどを経て、18年1月執行役員社長、同年3月代表取締役社長に就任、現在に至る。広島県出身、54歳。


    事業内容:たばこ、医薬品、食品・飲料の製造・販売

    本社所在地:東京都港区

    設立:1985年4月

    資本金:1000億円

    従業員数:6万3968人(2018年12月現在、連結)

    業績(18年12月期、連結)

     売上高:2兆2159億6200万円

     営業利益:5649億8400万円

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