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週刊エコノミスト Online 挑戦者2020

宮田啓友 GROUND社長 人と協働する物流ロボット

宮田啓友 GROUND社長 (撮影:武市公孝)
宮田啓友 GROUND社長 (撮影:武市公孝)

 生産労働人口が減少する中、増加を続ける国内の小口配送。作業の効率化のために欠かせない物流現場のロボット化、AI(人工知能)化に挑む。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=加藤結花・編集部)

 物流業界は、EC(電子商取引)の拡大による小口配送の増加や人手不足など課題が山積しています。その中で当社が進めているのが、物流ロボット開発です。

 特に最近物流業界で注目が高まっているのが、既存の環境下で人と一緒に働くロボットです。これは自律型協働ロボット(AMR)と呼ばれ、最適なルートを計算して動くため、倉庫内のレイアウトやオペレーションの変更は不要。初期投資を抑えながら、作業効率を約2倍以上向上させます。

 当社が中国のロボットメーカーと共同で研究・開発したロボットは、センサーやカメラなどを搭載し、注文が入った商品が保管されている棚の近くに自律的に移動、停止します。作業者は停止しているロボットのところに行き、タブレットに表示された商品を手に取りスキャン。照合で「OK」が出たものをカートに入れるだけ。

 商品が間違っていればスキャンでエラーが表示されますし、カートのどの場所に入れればよいかも表示されるので、作業者は指示に従うだけです。一つの作業が完了すると、ロボットは次の商品の場所に自律的に移動。ロボットはこれを繰り返し、すべての商品を回収し終えると、梱包・出荷場所へと移動して作業を完了します。

 作業者によるピッキング作業は、広い倉庫内を駆け回るため重労働で、効率も高いとは言えませんが、ロボットを導入することで作業者の歩行数を大幅に低減し、生産性が向上します。また、ロボットの指示で作業をするので、商品の保管場所を覚える必要がなく、手順も提示されるため、作業者の教育が不要。初めて作業するアルバイトも即戦力になります。

 また、AI物流ソフトウエアの自社開発にも力を入れています。倉庫内の商品の効率的な入出庫、輸送などを行う情報処理プログラムのアルゴリズムで特許を取得しました。

注目が集まる、人と協働するロボット
注目が集まる、人と協働するロボット

物流業務の受託事業で黒字化

 2007年に物流事業の責任者を募集していた楽天に入社、翌年に物流事業長に就任しました。楽天の三木谷浩史社長からミッションとして言い渡されたのが物流業務の負担により、売り上げが停滞している事業者を支援する事業の創出でした。そこで当時の物流マーケティングデータを調べると、国内の物流倉庫の稼働率が平均して7割程度だということが判明。活用できていないスペースがあった物流倉庫の一部を借り受け、物流業務の受託を始めました。事業は好評で、当時ブームになった北海道の牧場が製造する生キャラメルの小口配送業務を受注。1日300件程度だった物流取扱件数は7000件程度までに爆発的に増加。黒字化を達成しました。

 2010年に楽天物流が設立され、社長に。その後、海外での物流インフラ整備の仕事をしていましたが、経営幹部の間で、アマゾンと対抗していく上で巨額の資本を物流に投資し続けることに対する意見が分かれ、潮時だと感じて退社しました。

 物流から離れることも考えましたが、やはり物流業務を極めたいと、15年に起業しました。

 現在は従業員も40人程度まで増え、昨年11月には日本で初めてAMR30台をアパレルECの物流倉庫に導入しました。当社が開発したロボットが物流現場のいろいろな場所で働いているのを早く見たいです。


企業概要

事業内容:世界中の先端テクノロジーを活用した物流ソリューションの企画・開発・提供

本社所在地:東京都江東区

設立:2015年4月

資本金:10億円(資本準備金含む)

従業員数:約40人


 ■人物略歴

みやた・ひらとも

 1971年神奈川県出身。上智大学法学部卒業、96年三和銀行入行。デロイトトーマツコンサルティング、アスクルを経て、2007年楽天入社。08年物流事業長就任。10年楽天のグループ会社楽天物流社長。その後、EC(電子商取引)を支える物流を極めようと、15年に起業した。48歳。

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