加藤優子 オマツリジャパン社長 祭りの「助太刀」で日本を元気に
少子高齢化や資金不足で存続の危機にある日本の祭りを、新たな発想で「助太刀」する。
(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=岡田英・編集部)
日本には年約30万件の祭りがあるとされ、経済波及効果は当社試算で1.4兆円に上ります。でも、大規模な祭りでさえ少子高齢化やマンネリ化で担い手が減り、協賛金不足で困っている。そんな祭りを助けたい、と始めたのがオマツリジャパンです。
現在、収益の柱の一つは自治体向けの祭り運営サポートです。主な対象は、自治体が予算を組むような大きな祭り。観光客を増やしたい自治体からお金をもらい、祭りを取材して記事を書いて自社サイトやSNS(交流サイト)で発信したり、外国人観光客向けの参加型体験ツアーを企画したりして、集客を促します。例えば、「やっさ、やっさ」のかけ声に合わせて約7000人が踊り歩く広島県三原市の「三原やっさ祭り」の外国人向けモニターツアーは、地元の人の指導を受けて事前練習してから本番に臨むプランにし、参加した12カ国約20人から好評でした。
このほか、最近は東京や大阪といった大都市に地方の祭りを集めるイベントも人気で、年50件以上関わっています。2019年10月に大阪府などの主催で万博記念公園(大阪府)で開かれたイベントでは、秋田県の「なまはげ」や、悪口を言い合いながら供え物を奪い合う茨城県笠間市の奇祭「悪態まつり」など日本中の祭りを、各主催者と交渉して集めました。
収益のもう一つの柱は、祭りでPRしたい企業と協賛金を集めたい祭り主催者とのマッチングです。例えば、永谷園は協賛金を支払って夏祭りの会場にキッチンカーを出店し、「冷やし茶づけ」の販売とアンケートを実施。祭り会場なら自然と人が集まるし、アンケートも調査会社に頼むより低いコストでできます。
もともと画家志望で、美大で油絵を描いていました。でも11年3月、大学3年の時に東日本大震災が起き、自分がやっていることが「あまり役に立たないな」と無力感を感じました。その年の8月、青森県の「ねぶた祭」に行き、震災後の祭り自粛ムードから一転、みんなすごく楽しそうに踊っているのを見て、祭りの力ってすごいなと思ったんです。ところが翌日、青森の地元紙を開くとハネト(踊り手)の数が10年前から半減しているとあり、困っている祭りを支援したいと思いました。
小さな祭り救いたい
大学卒業後、漬物メーカーに就職し商品開発やデザインをする傍ら、フェイスブック上で「オマツリジャパン」のページを作成。各地の祭りに行っては日記を載せたり、祭りの告知ポスターを美大の友達を集めてデザインし直してあげたりするうち、祭りの運営を手伝うようになり起業に至りました。
最初は、商店街などの小さな祭りの企画を半年かけて一緒に考えたりしていました。でも支援できる祭りは限られ、収益も小さく、会社が持たないと思い、自治体や企業からお金をもらうビジネスモデルに転換したんです。
とはいえ最終的にはやっぱり小さな祭りを助けたい。そのために、自社サイトの祭り主催者向け会員サービス「オマツリジャパンリーダーズ」を充実したい。無料で宣伝でき、また屋台向けの業務用食材や警備スタッフの手配もできます。今後はみこしの担ぎ手が足りない祭りと担ぎたい人のマッチングなど、困り事をウェブ上のサービスで解決していきたいです。
企業概要
事業内容:祭りのプロデュース、情報発信、ツアー企画など
本社所在地:東京都新宿区
設立:2015年11月
資本金:6620万円(20年1月現在)
従業員数:12人(アルバイト・パート含む、20年1月現在)
■人物略歴
かとう・ゆうこ
1987年生まれ。東京都出身。武蔵野女子学院高校(現・武蔵野大学高校)卒。2012年武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業、漬物メーカーのピックルスコーポレーション入社。商品開発やパッケージデザインを担当。14年7月に任意団体「オマツリジャパン」を立ち上げ、15年11月に株式会社化。32歳。