人気と投信基準価額は別物=正岡利之/3
投資信託について、「個別株に比べてリスクが分散されている」といった漠然としたイメージは持っていても、詳しいことを知らない人は意外に多い。今回は、投信について基礎的なことを復習したい。
投信は、一人ひとりが資金を出し合い、まとめて運用会社の専門家が運用してくれる。一人の個人の資金だけでは「幅広く世界に分散投資」することは難しいが、投信なら小口の資金でも可能だ。
投信は、銀行や証券会社の店頭またはネット上の手続きによって、購入や換金ができる。保有している投信の一部だけを換金(解約または販売会社による買い取り)することも可能だ。
個人の取引相手である銀行や証券会社などを販売会社という。しかし、販売会社が運用するのではなく、実際に運用しているのは、専門家である運用会社だ。
また、投信の財産自体を管理・保管しているのは信託銀行である。投信の財産は、信託銀行自身の財産とは区別されている(分別管理)ので、仮に運用会社・信託銀行が倒産しても財産は保全される。
投信には、組み入れる銘柄によってさまざまな種類がある。どのカテゴリーの有価証券を保有し、どのような運用を行って、どの位の成果を狙うかは、投信ごとに決められている。それが各投信の名称に反映されていて、目論見書で詳細な定義を確認できる。
例えば、日経平均株価を対象とする投信で「インデックス運用」という表示があれば、日経平均と同じ値動きを目指す投信である。
価額は運用成績次第
投信に入っている複数の個別銘柄の時価を加重平均することで、その投信の価格を計算する。この価格を「基準価額」という。投信の売買は基準価額で行うが、運用成績が良好であれば上昇し、逆の場合には下落する。投信そのものの人気・不人気(需給)で価格が上下しているわけではない。
基準価額は設定時(投信が生まれる時)を1万円(1口=1円として1万口)としている。相場が高い時でも低い時でも、設定する時の基準価額は1万円だ。
図を見てみよう。日経平均に連動する投信Aが基準価額1万円で設定されたとしよう。その後、日経平均が下落して、基準価額が8000円に下落後、反転して1万2000円になったとする。このタイミングで日経平均に連動する投信Bが新たに設定されると、その基準価額は1万円である。投信AとBの基準価額を比較して、どちらが割高・割安ということにはならない。
また、実際に投資のパフォーマンスを判断する際には、基準価額の動きを見るだけでは不十分だ。次回に詳しく見ることにしたい。
(正岡利之・MUFG資産形成研究所長)
■人物略歴
まさおか・としゆき
1982年、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社。主に年金や投資信託を中心として、資産運用業務に携わる。2015年より同社で金融教育業務に従事。18年8月より現職。