週刊エコノミスト Online2020年の経営者

編集長インタビュー 二木浩三 アールシーコア社長

Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 中村 琢磨、東京都目黒区の本店で
Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 中村 琢磨、東京都目黒区の本店で

ログハウス国内首位、国産材拡大

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── ログハウスの建築販売で国内5割以上のシェアです。日本でログハウスが売れる理由は。

二木 木の心地よさだと思います。木は厚みがあるほど本来の性能が生きてきます。外気の温度を遮断する断熱性能で木はコンクリートの12倍です。ログハウスは丸太を加工したログ材を積み重ねているので、夏は涼しく冬は暖かい。ログハウスと聞くと別荘用だと思われるでしょうが、当社では90%以上住宅用に販売しています。

── 平均価格はいくらですか。

二木 平均価格帯は2400万円台です。大手住宅メーカーだと中心価格帯は3500万円くらい。ログハウスは構造が比較的単純で、日本の一般的な住宅のように玄関があって、廊下があって、その奥に部屋がいくつも壁で仕切られているような造りではありません。本来、平屋ですが、屋根裏を付けることで2階建てのように住むこともできます。高いシステムキッチンや内装にお金を掛ける他の住宅メーカーとはコストの掛けどころが違います。

── 薪(まき)ストーブを据え付ける人が多いとか。

二木 この構造だと広い吹き抜けができて、薪ストーブも楽しめるようになります。6割近い人が設置しています。

── ログハウス以外のモデルもあります。

二木 木造の躯体(くたい)の外壁を鋼板で覆った「ワンダーデバイス」というモデルが全販売棟数の半分を占めます。家の中は、壁・床・天井すべて無垢(むく)材で、雰囲気はログハウスと変わりありません。街の中にも合うデザインで人気があります。

購入者同士で交流

── 購入者たちが展示場に来て無償で案内役を務めるそうですね。

二木 「コーチャー」と呼んでいて約900人います。当社で家を建てた人たちが、自分の暮らしぶりを来場者に説明します。みな自分がどんな家に住んでいて何が楽しいか、どんな苦労があるかなど、積極的に話したくなるのです。建てた人同士でもコミュニティーができていて、「今度、出張するけど泊めてくれませんか」といった会話も交わされています。

── ログハウスを手掛けるようになったきっかけは。

二木 1985年ごろに友人に別荘造りを手伝ってほしいと言われ、米国やカナダにはログハウスがあると知りました。近くにあった有名人の別荘を取材したマスコミの取材班が、友人のログハウスに気付いて、それを面白がってくれました。それをみて商売ができそうだと思いついたのです。

── ログ材を輸入して別荘事業に乗り出したのですね。

二木 日本の別荘保有率を調べると多く見積もっても3%くらい。先進国だと15%から20%はあるから、これはきっと大当たりするだろうと考えたのです。バブル期だった当時、別荘もそこそこは売れました。ところが、購入者は建てた当初は別荘を使うのですが、そのうちに使わなくなります。私も、別荘がなくても、あくせくしないで暮らすことが本当の豊かさではないかと思い始めました。ログハウスはそうした暮らし方に合っています。

日本の住宅を変える

── それでログハウスを住宅用として売るようになったと。

二木 人間は肉体的に弱い生き物だから家が必要です。家は道具に過ぎない。だから「たかが家、されど家」と私は定義したのです。

 バブル期は年間の住宅着工戸数が約170万戸(90年)でした。人口当たりの住宅着工戸数は外国に比べて3倍にも上ります。住宅の寿命が短いことが理由だろうと調べて、日本は欧米に比べて著しく短いと気づきました。

── 日本の住宅は30年持つかどうかです。

二木 ログハウスは造りがしっかりしていて長持ちします。当社は施工したすべての住宅に60年の品質保証をしています。業界ではトップでしょう。社内に100年保証を目指せと発破を掛けています。

── 2019年3月期は6億3500万円の営業赤字でした。

二木 原料をカナダからの輸入に頼っていましたが、大規模な山火事が原因で輸入が滞り、上場(05年2月)以来初の営業赤字でした。20年3月期には調達問題が解決したことで、売上高が前年比41%増の175億円と過去最高を見込み、1億円の黒字に転換する予想です。

── 国産材への転換を進めているそうですね。

二木 ログ材で国産比率は5割に近づいています。2~3年以内に6割に引き上げる計画です。日本は世界有数の森林大国なのに、ほとんど森林を使っていません。林野庁の本郷浩二長官からは、当社が国産の木材を使っていることに感謝されました。

(構成=浜田健太郎・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんな仕事をしていましたか

A 石川県で事業に失敗。33歳の時に上京しインテリア販売会社で世話になって38歳でアールシーコアを設立しました。

Q 「好きな本」は

A 『論語』です。2500年前の言葉が人間の本質を捉えているからです。

Q 休日の過ごし方

A 数年前に当社の和風住宅「程々(ほどほど)の家」を建てて、そこで寛ぐことです。


 ■人物略歴

ふたぎ・こうぞう

 1947年生まれ。石川県立小松実業高校卒業、80年フジエテキスタイル入社、85年アールシーコア設立、社長。石川県出身、72歳。


事業内容:ログハウスなど木造住宅の施工販売

本店所在地:東京都目黒区

設立:1985年8月

資本金:6億6076万円

従業員数:269人(2019年9月末、連結)

業績:19年3月期、連結

 売上高:123億9700万円

 営業損益:6億3500万円の赤字

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