週刊エコノミスト Online2020年の経営者

編集長インタビュー 太田栄二郎 森永製菓社長

    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都港区の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都港区の本社で

    チョコ、ゼリー飲料に追い風

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 増収増益が続き、最高益を更新していますが、その理由は。

    太田 外的な追い風の要因が大きかったですね。例えば健康志向の高まりで、チョコレートに含まれるポリフェノールが高血圧などに良いということで、チョコレートの市場が伸びました。また、甘酒も美容や健康に良いとされ、この4~5年で4倍に伸びたほか、栄養補助ゼリー飲料「in(イン)ゼリー」やアイスクリームも好調です。

     社内的には2014年が転換点でした。それまでは営業利益が20億~30億円の会社で、このままでは生き残れないという危機感がありました。そこで14年に構造改革を行い、一つ一つの事業を根本的に変えたのです。また、無理に売り上げを追わずに、強みのある製品に経営資源を集中し、さらに伸ばしていきました。構造改革で経営体質が改善したところに追い風が吹いたというわけです。

    ── アイスクリームの「チョコモナカジャンボ」は18年連続で売り上げが伸びているそうですが。

    太田 18年間伸び続ける製品はなかなかありません。チョコモナカジャンボはパリッとした食感の良さをうたっており、鮮度にこだわっているのが特徴です。アイスクリームは賞味期限がない商品ですが、長く置いておくとアイスクリームの水分がモナカに移ってしまうからです。製造後早く食べていただきたく、小売店にも在庫をあまり持たないようにしてもらっている珍しい商品です。鮮度とおいしさから、今年も売り上げが伸びそうな勢いです。

    ── インゼリーは好調ですが、何が評価されているのですか。

    太田 インゼリーは当社の一番の稼ぎ頭ですが、飲む場面が非常に広い。最初は「10秒でとれる朝ごはん」というコンセプトでしたが、身体の調子が悪い時の栄養補給のほか、受験生にも好評です。また、登山やスポーツの最中など、いろいろと用途が広がっています。年齢層も高齢者から子どもまで幅広く、縦にも横にも広がっているのはありがたいですね。

    ── 最近は競合製品も増えています。

    太田 インゼリーは先行商品として市場を開拓してきた強みに加え、味の浸透度やゼリー化する技術に強みがあると思っています。それは、小売り大手が価格の安いPB(プライベートブランド)商品を投入する中でも、トップのシェアを維持できていることにも表れています。この「in」のブランドでは、プロテインのバーを展開していて好調です。

    ── 他に健康志向に合う製品は。

    太田 「ラムネ」があります。ラムネはブドウ糖90%の商品で、脳にエネルギーを与えると言われ、売り上げが伸びています。

    高齢者、外国人に需要

    ── 人口が減っていく中で、菓子は今後も売れるのでしょうか。

    太田 成長分野は「健康」と「海外」と言っていますが、国内事業も今後、飛躍的に伸びることはなくても、チャンスはあると考えています。私自身が国内事業をずっと手掛けてきた経験を踏まえれば、事業の構造や中身を変えることで、国内の需要はまだまだ取り込めますよ。

    ── 具体的にはどんな需要ですか。

    太田 一つの例を挙げれば、高齢者が以前に比べ、菓子を食べるようになっていますね。菓子は子どもの頃に食べていても、大人になると食べなくなるものですが、高齢になると懐かしさから再び食べるようになっているんです。さらに、高齢者が孫とやりたいことの2番目に「一緒にお菓子を食べること」が挙がっています。高齢者が孫に菓子を買う場面は今後、増えてくるでしょう。

     また、インバウンド(訪日外国人)需要も期待できると考えています。観光庁によると、18年の訪日外国人の旅行消費額は約5兆円で、そのうち菓子は1800億円だと言われています。政府は旅行消費額を30年に15兆円に引き上げる目標を掲げていますが、そこまで行かなくても3~4倍に増えれば、菓子の消費額は5000億円を超えることになります。現在の国内のチョコレート市場と同じぐらいの規模ですね。

    ── 外国人に人気の商品は?

    太田 例えば、米国や英国では「ハイチュウ」がよく売れており、訪日客の出身地でのマーケティングとも連携して、日本での購入につなげる仕掛けを考えています。

    ── 17年には兄弟会社の森永乳業と経営統合を検討するも、実現には至りませんでした。

    太田 今は何も経営統合を検討している事実はありません。ただし研究開発、情報交換など、森永乳業と一緒にやれることは結構あります。大事なことは、これからいかに生き残っていくかであり、そのための方法は森永乳業との協業に限らず、さまざまな選択肢があると思っています。

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 38歳で支店長として北海道に赴任しました。全社的な組織変更を現場で指揮するなど、北海道での経験が会社生活で一番印象に残っています。

    Q 「好きな本」は

    A ダン・キャリソン、ロッド・ウォルシュ著『アメリカ海兵隊式 最強の組織』です。組織の強さやリーダーのあるべき姿を説いています。

    Q 休日の過ごし方

    A 犬を飼い始めたので、散歩など専ら犬の相手をして癒やされています。


     ■人物略歴

    おおた・えいじろう

     1959年生まれ、兵庫県立姫路西高校卒業、82年同志社大学商学部卒業後、森永製菓入社。取締役営業本部長、上席執行役員、常務執行役員、専務執行役員などを経て、2019年6月から現職。兵庫県出身、60歳。


    事業内容:菓子、冷菓、食料品などの製造・販売

    本社所在地:東京都港区

    創業:1899年8月

    資本金:186億1000万円

    従業員数:2717人(2019年3月現在、連結)

    業績(19年3月期、連結)

     売上高:2053億6800万円

     営業利益:202億1700万円

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    12月8日号

    もうかるEV(電気自動車)、電池、モーター14 「電動化」が業績・株価を左右 「次の勝者」探しも活発化 ■神崎 修一/桑子 かつ代/斎藤 信世16 巨人の焦り トヨタから「自動車」が消える日 ■井上 久男18 自動車部品 日本電産が台風の目に ■遠藤 功治20 図解 EV用電池「国盗り物語」 ■編集 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事