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インタビュー ノルベルト・ケットナー ウィーン市観光局長 観光と都市の持続可能な発展を目指す

ウィーン市提供
ウィーン市提供

 オーストリアの首都ウィーン市は、新観光戦略「ビジター経済戦略2025」を発表した。20年はベートーベンの生誕250周年で観光客の急増が予想される中、地元住民の生活環境と観光ビジネスの調和を図るのが狙いだ。ノルベルト・ケットナー観光局長=写真=に話を聞いた。

(聞き手=稲留正英・編集部)

── 新戦略は従来の観光政策とどう違いますか。

■従来は、「デスティネーション(旅行目的地)が観光に何を提供できるか」を考えていました。しかし、新戦略では、「観光がデスティネーションに何を提供できるか」と逆の発想です。新戦略の利害関係者は純粋な観光客だけでなく、ウィーンに住み、働き、勉強し、買い物をし、ビジネスや文化イベントなどに参加する全ての人が対象となります。これらの利害関係者の知見やアイデアを取り入れ、市の持続可能な発展を促します。

── なぜ、そのような発想になったのですか。

■ウィーンを訪れる観光客が急増していることが背景にあります。ホテルのゲスト数は2018年に750万人と1990年から150%増えました。観光産業が生み出す付加価値は年間40億ユーロに達し、9万人分の雇用を生み出しています。ウィーン市民の90%以上は観光産業が市にとって有益であると肯定的に見ています。

 しかし、今後、観光産業が秩序なく拡大すれば、市の資源が乱用され、住民の生活環境を脅かす恐れがあります。市のインフラ、公共交通機関、水道施設などは観光客だけでなく、地域住民にも利用されているからです。

── 新戦略の数値目標は。

■25年に観光産業の付加価値を60億ユーロに増やすほか、訪問者の自動車利用(26%)と列車利用(21%)の割合を逆転させる、ウィーン市民の観光に対する肯定的な見方の割合(9割)を維持するなど、持続可能性に大きく配慮しています。

必要に応じ新たな規制も

── 観光局の役割は。

■観光局では、マーケティングだけでなく、観光資源の管理にも焦点を当てています。専門家として、ビジター経済の利害関係者と観光事業者などのプレーヤーを仲介し、高品質な観光サービスの開発を支援します。必要に応じて、新たな規制も行う必要もあります。例えば、19年はモーツァルトの格好をしたチケット売りに関する法律の改正を行いました。

── 新戦略は日本から訪れる観光客にはどのようなメリットがありますか。

■我々のビジョンは、すべての利害関係者に素晴らしい生活の質、高品質で多様なサービス・商品、訪問者には素晴らしい体験を届けることです。ぜひとも、日本からのゲストには、ゆっくりと時間をかけ、街を巡り、さまざまな音楽プログラムを堪能していただきたいと思います。日本ではあまり知られていない隠れたスポットを紹介するサービスも始めます。これまでとは、全く異なる体験をもたらすでしょう。

── 新戦略では、「デジタル化」もキーワードです。

■例えば、ウィーンのカフェで、そこにしかない雰囲気を楽しむために、デジタル技術はいりません。しかし、そこへのルートを素早く、快適に調べるためには必要です。観光局のデジタルコンシェルジュは、自分のお気に入りの絵画を美術館がすいている時間帯に鑑賞に訪れるときや、自分の興味や天候に合ったイベントを調べるときに役立つでしょう。

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