テクノロジー挑戦者2020

関洋二郎 ゼノデータ・ラボ代表 企業の未来をIT技術で予測

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 山火事が起きると製菓企業に悪影響……。「風が吹けばおけ屋がもうかる」の考え方をITテクノロジーの力で可視化。企業の将来を検索できるシステムを提供する。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=白鳥達哉・編集部)

 新聞や通信社が配信するニュース、経済リポート、決算短信、有価証券報告書などの文書内容をAI(人工知能)で分析し、経済や企業の将来を予測する仕組み「ゼノブレイン」を提供しています。

 たとえば、「香港デモの長期化によって、香港からオフィスを移転する企業が増えている」というニュースがあった場合、「香港デモ長期化」と「オフィス移転増」という経済事象に因果関係があるという情報が得られます。そして、また別のニュースで「香港でのオフィスの移転による影響で、空調機器の需要が減っている」という話題があれば、それぞれのニュースにも関連性があると判断できます。このように一つのシナリオに関連する事象を次々と結びつけていくことで、最終的に影響が及ぶ企業を予測するのが、ゼノブレインの仕組みです。

 また、シナリオによる影響の大きさも数値化し、企業の将来にどれだけインパクトがあるのかが一目で分かるようにしています。市場シェアなど具体的な情報がある場合はその数値を、そのような情報がない場合は、我々のアナリストチームで協議を行って数値を決めています。

人々の意思決定を変える

 大学生のころ、周りの環境にあまりなじめず、半年くらい国内を旅していました。その中で地方の過疎地など、経済状況が悪い地域の様子を知り、地方経済、ひいては日本の経済に危機感を持つようになりました。

 日本の経済を良くするにはどうすればいいのか。まずは経済をもっと勉強をしようと、大学生でも取れる経済系の最高峰の資格である公認会計士を目指すという目標を掲げました。

 一生懸命勉強して何とか合格し、その後、あらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)に入社。5年間在籍した後、経済情報会社のユーザベースに転職し、情報提供サービス「スピーダ」事業開発責任者として企画設計を担当しました。

 スピーダは、金融機関、事業会社向けに世界中の企業財務データ、業界リポート、市場データなど、企業戦略の分析に必要な情報を提供するサービスですが、ユーザーからは「たくさん情報があっても、それを使いこなせない」という声をよく聞きました。ユーザーは大量の情報が欲しいのではなく、それらの情報からどの企業が伸びるのかという予測が欲しいのではないかと気づき、それを提供できれば、今までにないサービスが生まれるのではと考えました。

 ユーザベース社でのサービス立ち上げも検討したのですが、上場前で新規事業もやりづらいタイミングでした。それならば、自分で起業してしまおうと思ったのが、ゼノデータ・ラボ設立のきっかけです。

 現在、ゼノブレインは金融機関や資産運用会社などが導入しており、経済動向や投資先の調査に利用されています。

 今後は、企業や経済の「将来はどうなるのだろう」という疑問に対して、我々が答えを提示していきたいです。それによって人々の意思決定を変えて、世の中が良い方向に進むように貢献したいと思っています。

すべてのシナリオを基に企業の将来性を総合的に評価する新機能も5月に提供予定 ゼノデータ・ラボ提供
すべてのシナリオを基に企業の将来性を総合的に評価する新機能も5月に提供予定 ゼノデータ・ラボ提供

企業概要

事業内容:経済・企業の将来予測プラットフォームの提供

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2016年2月

資本金:7億6000万円

従業員数:30人


 ■人物略歴

せき・ようじろう

 1984年7月生まれ、茨城県出身。慶応義塾大学商学部卒業。大学在学中の2007年12月にあらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)入社。公認会計士業務、システム・データ監査業務などに従事。12年にユーザベースに入社、情報提供サービス「スピーダ」の事業開発部責任者を担当。16年ゼノデータ・ラボを設立。35歳。

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