岡村直人 カーマンライン代表 頼れる上司、紹介します
日本企業のデジタル化を推し進めるために、日本初の「企業」と「上司」をつなげるサービスを展開する。
(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=白鳥達哉・編集部)
現在、多くの日本企業が、IT技術を使った新規事業の立ち上げ、新たなビジネスモデルの確立といった、いわゆる「デジタル化」の導入が急務と考えています。しかし、課題となるのが、リーダーとしての役割を担える人材の不足です。いままでデジタルビジネスに踏み込んだことのない人たちがいくら自分で勉強をしても、必要となるのは現場で培った知見や経験です。この問題を解決するために、デジタル化を導入しようと考えている企業へ優秀な人材を紹介する、「シェアボス」というサービスを提供しています。(挑戦者2020)
シェアボスでは、デジタル系の第一線とも言える企業で、部長職や役員職を務めた実績のある「ボス」と呼ばれる人たちが、現在200人ほどいます。企業側から案件の相談をもらい、私が詳細を聞いた上で最適なボスを選び、相談の場を設けます。相談する中でボスとの相性を見てもらい、合わないと感じたら別の人に話を聞くことも可能です。
利用プランがいくつかあり、料金に応じて1カ月に決まった回数と時間で、相談やプロジェクトにかかわってもらう形になります。お試しのプランは月額30万円で、2回まで相談ができますが、紹介する人材のクラスから見ても、料金は大分安く抑えています。
実用例としては、ある製造業の企業がCAD(キャド)(コンピューター支援設計)のデータをインターネット上にアップロードすると人工知能(AI)がそのデータを解析し、見積もりを出すというシステムを作ったのですが、それをどのようにビジネスにつなげていくのか、特にマーケティングのやり方について悩んでいました。そこで、外資系の企業でインターネットを経由して、ソフトを提供するサービスのマーケティングをしている責任者クラスの人が、相談に乗っています。
美容師からの転身
父親が建設会社を経営していたのですが、バブル崩壊のあおりで倒産。学生の頃から美容師の母親の仕事を手伝っていました。
その時、たまたまお客さんにIT企業に勤めている人がいて、「これからはインターネットの時代だからプログラマーになったほうがいい」と勧められたので、試しにプログラミングの勉強を始めてみたのですが、すごく夢中になってしまい、気づいたらプログラマーとしてITの世界に飛び込んでいて、数年後には上場企業で設計主任を務めるまでになりました。インターネットがなかったら、いまでも美容師をやっていたかもしれません。
その後もコンサルタントとして仕事をしたり、グリー、そしてイドム(旧ガリバーインターナショナル)で事業開発を担当したりもしました。でも、自分のお金で事業を起こさないとビジネスとは言えないと考えるようになったのが、起業の発端です。
シェアボスは始めたばかりのビジネスで、事例はまだ少ないのですが、ベンチャー企業から大企業まで、広く利用されています。また、進行中の事例について、具体的な情報を公開できるようになれば、他の企業からの利用も加速すると期待しています。
企業概要
事業内容:デジタル系幹部人材のシェアリングサービスの提供
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2018年7月
資本金:200万円
従業員数:3人(委託社員含む)
■人物略歴
おかむら・なおと
1978年11月生まれ、千葉県出身。プログラマーなどの経歴を経て、2013年にグリーに入社し、新規事業開発に従事。15年イドム(旧ガリバーインターナショナル)で車のサブスクリプションサービス「NOREL」の事業責任者を担当。2018年カーマンラインを設立。41歳。