経済・企業挑戦者2020

阪井優 yup社長 報酬即日払いでフリーランス支援

    撮影 武市公孝
    撮影 武市公孝

     仕事の報酬を受け取るのが数カ月後になるのは過去の常識。報酬を即日受け取ることができる仕組みでフリーランスの資金繰りを円滑化する。

    (聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=吉脇丈志・編集部)(挑戦者2020)

     フリーランス向けサービス「先払い」は、フリーで働く人たちが、早ければ請求書を出したその日に報酬を受け取ることができるサービスです。仕事をくれた取引先企業に送る請求書の画像などをオンライン登録してもらうと、報酬額から当社の手数料を差し引いた額を先に支払い、後で取引先企業から当社に報酬額分を支払ってもらう仕組みです。

     日本では請求書の発行から入金までの期間が3カ月、長い場合には半年かかることも当たり前で、フリーの人は常に厳しい資金繰りを強いられています。

     先払いサービスは、大企業では手形割引などの形で一部普及していましたが、個人事業主や中小企業にはほとんど浸透していません。そこで、フリー向けに特化して昨年9月にサービスを開始したところ、約7カ月で800件の申し込みがあり、報酬の総額は累計で約4億円に上るなど大きな需要がありました。足元は新型コロナウイルスの影響でフリーの労働環境が厳しさを増しており、申し込みが殺到しています。特にシステムエンジニアやウェブデザイナーなどクリエーティブ系の職種の利用者が多いですね。

     先払いサービスの申し込みに必要なのは免許証などの本人確認資料、電話番号、法人なら法人番号など。あとは請求書の画像ファイルや写真などをオンライン上で登録してもらいます。審査は最短60分で完結するのでコストも抑えられます。手数料は一律10%です。

     ポイントはSNSなどソーシャル情報の連携を必須にしている点です。利用者の電話番号、取引先企業の情報に加え、SNSのデータなどを集め、利用者一人ひとりの信用度をスコアリングすることで与信審査を行います。

    利益より利便性

    起業家イベントに出場した1週間後には企業を決意する
    起業家イベントに出場した1週間後には企業を決意する

     学生の頃、アルバイト先の卸業を営む小さな町工場の社長から「請求書を送ってから入金までの期間が長く資金繰りが厳しい」という話をよく聞いていました。中小企業やフリーの厳しい現実を知ったことが私の原点です。

     卒業後はNTTドコモでシステム開発・構築に携わりました。しかし、町工場での体験が忘れられず「経営現場の課題を解決したい」という思いが強まりました。転職先の電子決済ベンチャー「コイニー」でフィンテックに興味を持ち、2018年11月に出場した起業家イベントが転機になり、1週間後には起業を決意。19年4月に独立しました。

     今後は先払いサービスだけではなく、フリーや個人事業主のお金に関わる課題全般を解決したいと思っています。

     請求書は、一般的には請求者が自分で作成して、個別に取引先に請求して管理するなど労力がかかります。そこを丸ごと当社が代行し、報酬の請求から管理、回収まで一貫して引き受けられないか考えています。

     また、フリーで働く人は早く入金してほしい一方、仕事を発注する会社側は少しでも安い報酬でと考えています。そこで取引先が約束の支払期日より早く払える場合には、支払額を値引きできる仕組みなど利便性の高いサービスを作りたいです。


     ■人物略歴

    さかい・ゆう

     1989年堺市生まれ。智弁学園高等学校、大阪教育大学教育学部卒業。NTTドコモ、コイニー(2018年に「hey」のグループ化)を経て、19年2月にyup(ヤップ)を創業。30歳。


    企業概要

    事業内容:フリーランスや中小事業者向け金融サービスの開発・運用

    本社所在地:東京都港区

    設立:2019年2月

    資本金:1200万円

    従業員数:6人(非常勤含む、20年5月25日現在)

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