テクノロジー挑戦者2020

福沢知浩 スカイドライブ代表 空飛ぶクルマを当たり前に

    撮影 武市公孝
    撮影 武市公孝

     世界で開発競争が激しくなっている「空飛ぶクルマ」。日本で初めて有人飛行試験に成功し、日本勢でトップを走る。

    (聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=岡田英・編集部)

     空飛ぶクルマは航空機やヘリコプターに比べてコンパクトで、垂直に離着陸できるので空港を経ず、目的地に直接行けるのが大きな特徴です。

     昨年12月、空飛ぶクルマに人が乗り込んで行う有人飛行試験を日本で初めて始めました。人が乗って操縦性や安定性などを検証するのが目的です。今年8月には、東京都内で公開のデモ飛行を披露する予定で、2023年の販売開始を目指しています。

    有人飛行試験を行った機体 スカイドライブ提供
    有人飛行試験を行った機体 スカイドライブ提供

     機体は乗用車と同じくらいの大きさで、電動バッテリーを動力源にして、四隅に2個ずつ計8個のプロペラで浮上します。仕組みはドローンに似ていますが、人間が2人乗れるように大きくしているので、ドローンよりも機体の制御が難しい。飛行試験は無人と有人合わせて1000回以上行い、嵐や突風といった悪天候時でなければ、安定して飛行できるようになってきました。試験は主に5分前後の航続時間で行っていますが、理想環境下なら10~20分、距離にして10キロ弱ほどのフライトが可能です。バッテリー容量が増えれば、航続時間・距離はさらに伸びるでしょう。

     販売開始に向けては、今はまだ「3合目」といったところです。有人機は無人機よりも求められる安全性がはるかに高く、さまざまな試験・検証を続けて安全性能を高めています。

    量産化で300万円に

     開発のきっかけは、トヨタ自動車で部品調達の仕事をしていたころにあった飲み会でした。そこで知り合った社内の有志たちと「イノベーティブ(革新的)なクルマを作りたいね」という話で盛り上がり、有志団体「カーティベーター」が12年に発足。アイデアを100個くらい出し合っていく中で「空飛ぶクルマが一番面白そうだね」となって14年1月から開発に着手しました。

     同年7月には今の5分の1サイズの無人機の走行・浮上に成功しました。トヨタを辞めて17年に中小企業向けのものづくりコンサルティング会社を起業したのですが、空いた時間で続けていた空飛ぶクルマの開発がやはり一番面白く、事業化のために18年7月にスカイドライブを設立しました。

     資金調達はファンドを回るところから始め、開発の進捗(しんちょく)に応じて必要な額を集めてきました。今のところ、順調に進んでいます。

     世界を見渡すと、ドイツのボロコプターや中国のイーハンは我々よりも約1年早く有人飛行試験を始めていますが、十分追いつけるレベルです。

     販売先はまずはタクシー会社のようなサービス事業者を想定しています。地上より速く、かつ移動自体が楽しい体験なので、観光目的のサービスが考えられます。機体の価格も最初は3000万~5000万円程度になりそうですが、将来的には量産化によって300万円程度に抑えたいです。機体の構造はシンプルなので、乗用車と同程度の価格にできるはずです。

     30年までには人間が操縦しなくても、自動運転で目的地に着けるようにするのを目指しています。最終的には空飛ぶクルマを、今の乗用車と同じくらい普及させたい。比較的安価なうえ、空港もいらないため、日常的に空を飛ぶのが当たり前になる。そんな時代が来るように、まずは航空機よりも騒音が小さいことなどを説明し、社会に受け入れてもらえるように取り組みを進めたいです。


    企業概要

    事業内容:空飛ぶクルマとカーゴドローンの開発・製造・販売

    本社所在地:東京都新宿区

    設立:2018年7月

    資本金:非公表

    従業員数:50人(パート・アルバイト含む)


     ■人物略歴

    ふくざわ・ともひろ

     1987年生まれ。東京都出身。ラ・サール高校卒業。2010年東京大学工学部卒業、トヨタ自動車入社。自動車部品のグローバル調達を担当。17年に独立して経営コンサルティング会社「福沢商店」を設立。18年7月、トヨタ時代から有志で開発していた空飛ぶクルマの事業化のためにスカイドライブを設立。32歳。

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