経済・企業挑戦者2020

カニ・ムニダサ コードクリサリスCEO ソフト技術者育成で日本復活を

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 米国仕込みのスパルタ方式でソフトウエアのエンジニア育成を図る。そこには技術大国、日本の復興を応援したい思いがある。

(聞き手=飯島一孝・ジャーナリスト)

 私が経営するソフトウエアのエンジニア育成スクールは、米陸軍の新兵訓練施設(ブートキャンプ)方式をモデルにした軍隊式の厳しいトレーニングが売り物です。集中コースと基礎コースの2講座があり、前者の場合、3カ月間、週5日午前9時から午後6時まで授業を行い、卒業時には即戦力として企業に就職できる実力が身に付きます。

 授業は毎朝9時のラジオ体操から始まります。出欠は厳しくチェックされ、3日以上休んだら原則退学です。また、3回遅刻すると欠席1回とみなされます。講師は4人とも外国人のソフトエンジニアです。基礎的な講義が終わると3、4人でチームを組み、実践的なプログラムを作成していきます。最終的には、全てのアプリ開発を1人で手がけられる人材の育成を目指しています。

 そもそも入学も簡単ではありません。集中コースでは、入学希望者に3段階の予備テストを実施しています。これは他のスクールにはあまりないシステムです。まず入学申し込み書に記入する前に、ウェブサイトにあるプログラミング言語の基礎テストに合格することが条件です。次に、講師が出す問題に、ネット面接で口頭で答えてもらい、コミュニケーション能力を試します。最後に、約2カ月かかる宿題が与えられます。それらを完全にクリアしないとスクールに入れません。定員は24人で、毎回定員の5倍以上の希望者がいますが、まだ一度も定員には達していません。

 卒業生に感想を聞くと「授業に付いていくのがキツかった」と話します。でも、教育レベルを落とさず頑張ってきたお陰で、設立約3年で10期生、計84人が卒業し、ほぼ全員が企業に就職しています。そして大半が1年目から年収600万円以上の給料をもらっています。その結果、スクールの評価が高まり、卒業前に企業から声がかかる生徒も少なくありません。

スリランカから日本へ

東京農工大学時代にはロボットコンテストにも出場
東京農工大学時代にはロボットコンテストにも出場

 私は父がスリランカ人、母が日本人で、日本で生まれ、スリランカで育ちました。高校までスリランカで勉強し、大学へ進学する時、ロボットを研究したいと思い、最先端の日本に帰国し、東京農工大学の機械システム工学科で学びました。卒業後、日本と米国でIT(情報技術)関連企業で働き、ソフトウエアの重要性を実感しました。そして自ら米シリコンバレーのソフトウエアのスクールに入り、技術を学びました。

 私にはスリランカ、日本、米国と三つの母国がありますが、今一番支援したいのは大好きな日本です。日本はこれまでハードウエア産業を中心に発展してきましたが、世界での技術のリーダーシップを失いつつあるのが悔しいです。日本の弱点はソフトウエアで、これをなんとかしたいと思ったのが、スクールを作ったきっかけです。

 スクールの生徒はこれまで米国などから来た外国人が過半数を占めていましたが、今年1月開講のクラスでは19人中、日本人が9人と約半数に増えました。授業は英語中心でしたが、5月から日本語コースを開設するので、日本人の生徒がもっと増えると思います。

 今後は大阪や九州、北海道でも私たちの授業を受けられるようにしたり、将来は中国やインドにも進出したいと考えています。


企業概要

事業内容:ソフトウエアエンジニア・リーダーの育成

本社所在地:東京都港区

設立:2017年5月

資本金:1800万円(20年1月現在)

従業員数:14人

東京農工大学時代にはロボットコンテストにも出場


 ■人物略歴

カニ・ムニダサ

 1973年スリランカ人の父、日本人の母の次男として日本で生まれる。3歳の時、家族でスリランカに帰国し、高校卒業後、日本に戻り東京農工大学機械システム工学科に入学。卒業後、渡米し、ストレージ機器開発、ソフトウエア開発などの企業で働いた。シリコンバレーでプログラミングを学び2016年、日本に帰国。翌年5月、「コードクリサリス」を設立した。クリサリスは英語でサナギの意味。46歳。

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