新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

経済・企業 挑戦者2020

石動力 hananeCEO きれいに咲く「規格外」の花

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 生花市場で仕入れて販売する通常の流通だけでなく、規格外の花を買い取る独自の事業を行うのが「hanane」だ。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=加藤結花・編集部)

「hanane」は、市場で値段が付かなかった規格外の花を販売しています。市場で販売される花には規格がありますが、花びらの付き方が不ぞろいだったり、茎の長さが短かったりして規格外となってしまった花は流通することなく、捨てられてしまいます。私たちはそういった花を生産者から直接買い取り、「チャンスフラワー」と名付けて格安で販売しています。

 廃棄されてしまう花の存在を知ったのは2015年ごろ。友人との世間話で規格外の野菜の話を聞いて、花にも規格外があるのではと東京農業大学の先生に相談したことが始まりでした。そこから、東京農大の卒業生で、JA伊勢原に勤める人を紹介してもらい、翌年にカーネーションなどの生産農家を訪ねました。

 初めて見た規格外の花は、生産農家の玄関に置かれていた段ボールに無造作に積まれた状態でした。茎の太さにばらつきなどはありましたが、花自体はとてもきれい。このまま捨てられてしまうのはもったいない、とその場で買い取りました。

 当時は会社の登記はしていましたが、花を販売する店舗を持っておらず、買い取った花を活用する場がありませんでした。活用先となり、そして事業が軌道に乗るきっかけとなったのが、知人5人を誘って始めた飲み会でした。その場で花を配り、私のまねをして参加者に花束を作ってもらったのです。

 参加者に持ち帰ってもらったところ、参加者の家族に大うけ。「花会」という名前で開催するようになると、口コミで参加希望者が増え、40人ほどが入る東京・四谷のレンタルスペース付き物件で毎月行うようになりました。

ドイツで知った「日常」

東京・虎ノ門にある「hanane」の店舗 hanane提供
東京・虎ノ門にある「hanane」の店舗 hanane提供

 19年6月、東京・虎ノ門に花屋「hanane」を開き、市場で仕入れた生花の他に週に2回、1本100円でチャンスフラワーを販売しています。並ぶのはバラ、ガーベラ、カーネーションなど30種類以上。33軒の生産農家と連携し、チャンスフラワーの売り上げは全体の4割を占めています。また、店舗で「花会」も続けていて、飲食代・花代込みで朝3500円、昼5000円、夜6500円。おかげさまで盛況です。

 高校を卒業して花屋に就職しましたが、当時は花が特別好きというわけでありませんでした。好きだったのは車の運転で、仕事にするなら運転する時間が多い職業に就きたいと考えて、配達業務のある花屋に決めました。だから、本当はずっと配達をしていたかったのですが、そういうわけにもいきませんでした(笑)。

 でも、そのおかげで6年間働いて、花に関する知識や技術が一通り身につきました。その後、会社を辞めてフラワーデザインを学ぶためにドイツに行きました。つてがあったわけでもないので、無償でいいので働きたいと現地の花屋と交渉。貯金を切り崩して働きました。

 ドイツで感動したのは、人々が日常で花を楽しんでいる様子です。日本では特別な日に花を購入する人が多いですが、ドイツ人はスーパーに行って食品を買った足で、少しの切り花を買って帰ります。

 チャンスフラワーや花会などの取り組みを通して、日本でも花や花屋がより身近な存在になるよう願っています。


企業概要

事業内容:生花の販売、イベント事業など

本社所在地:東京都港区

設立:2016年11月

資本金:300万円(資本準備金を含む)

従業員数:5人(アルバイトを含む)


 ■人物略歴

いしどう・ちから

 1978年横浜市出身。武相高校卒業。生花店に6年勤め、花の仕入れ、花束作りなどを身につける。その後、フラワーデザインを学ぶため、渡欧。約2年ドイツで過ごして帰国。ベンチャー企業勤務を経て、2019年6月、花屋「hanane」を開業。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

11月26日号

データセンター、半導体、脱炭素 電力インフラ大投資18 ルポ “データセンター銀座”千葉・印西 「発熱し続ける巨大な箱」林立■中西拓司21 インタビュー 江崎浩 東京大学大学院情報理工学系研究科教授、日本データセンター協会副理事長 データセンターの電源確保「北海道、九州への分散のため地産地消の再エネ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事