新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 書評

「毎日定休日」化した京都・三月書房=永江朗

 京都市中京区の新刊書店「三月書房」が6月10日で閉店した。寺町二条にある同店は、詩歌や評論、随筆などの品ぞろえに特徴があり、いわゆる「個性派書店」の元祖。市内のみならず、わざわざ遠方からやってくる本好きも多く、「自作が三月書房の棚に並ぶのが目標」と語る書き手も少なくない。

 この時期に閉店というと、「ここにもコロナの影響が」と思う人もいそうだが、閉店はかなり前から店主のメールマガジンで告知されていた。ただし、時期については明言されず、6月11日になって、前日で閉店したことがメールで発表された。有名店の閉店にありがちな、大勢の客が見守る中でシャッターを下ろすというドラマを避けたかったようだ。

 ここまで「閉店」と書いてきたが、三月書房のシャッターに貼られているのは「定休日変更のお知らせ」=写真。そこには「毎週、月曜・火曜・水曜・木曜・金曜・土曜・日曜とします」とある。ネット販売は継続しているので、廃業ではない。

 閉店(というか毎日定休日化)の理由は、コロナでもなく、経営不振でもない。店主の高齢化と後継者不在である。高齢化といっても、店主は70代に入ったばかり。安倍政権の方針ではまだまだ「活躍」させられる若さだが、そんなのごめんだ、人生もっと楽しみたいとばかりに、元気なうちのセミリタイアである。

 とかく書店の閉店というと、悲しむべきニュースとして伝えられがちだ。背景として「読書離れが」「アマゾンに押され」と語られることも多い。しかし、三月書房の事例でも分かるように、閉店に至る理由は必ずしも経営難とは限らないし、閉店する書店主が不幸だとも限らない。閉店ではなく定休日変更だという三月書房の告知は、情緒的になりがちな書店をめぐる報道についての批判とも読める。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事