中古マンションの良し悪しを見極めるなら「管理組合の議事録」を読むべき理由……管理が良くないマンションは価値が落ちる
今回は、限られた情報の中でどのように優良な中古マンションを探すかに焦点を当てる。
まずは管理組合の「総会の議事録」の閲覧を求めよう。マンションで抱えるさまざまな課題が満載だ。例えば、管理費や修繕積立金はどの程度の滞納があり、滞納に対してどのような対応をしているかが記載されている。また、駐車場や駐輪場、ごみ置き場、廊下、外壁などの共用部の使われ方や状態、更には今後の修繕計画など、マンションの事情がわかる。
修繕積立金の滞納がないマンションはむしろ少数派だし、多くの住民がいる以上、共用部の使い方に課題が全くないマンションは珍しい。経年によって建物が劣化するのは当然。要は、マンションの宿命である各課題を、管理組合がどのような姿勢で、具体的にどんな対策をしているかが重要である。
「長期修繕計画」を見れば建物の修繕予定がわかるほか、今後の積立金負担の傾向もわかる。多くのマンションでは、新築時に売り主が策定した長期修繕計画をそのまま変更せず使用している。その際、修繕積立金を低額に設定しているケースが多々あり、築10~15年目に突入したときに一気に数倍に引き上げたり、多額の一時金を徴収したりする計画になっている。
こうした内部資料は、マンション購入予定者など第三者に閲覧させることは義務ではない。購入時は任意で閲覧をお願いすることとなる。言い換えると、閲覧に応じる管理組合はその情報開示姿勢だけで好感が持てるということだ。では、こうした書類を確認できない場合はどうすればよいか。
まずは外見から
まずは「見た目」に注目してみよう。中古マンションを見学する際、いきなり室内(専有部)に入らず、「共用部」をじっと見つめてみる。例えば外壁。昨今のマンションはタイル張りが主流だが、ざっと見渡し、タイルがはがれたり浮いたりしているところはないか確認を。タイルは落下すればたちまち凶器となり得るし、状況を放置していれば躯体(くたい)そのものが長持ちしない。
外壁に問題があることが判明したら、管理組合がその状況を把握し、対処する予定があるかを確認しよう。不動産仲介担当者を通じて管理組合に確認してもらうか、管理人に尋ねてみてもいい。
廊下や階段も併せて見てみよう。経年劣化は建物の宿命なため、さほど問題ではない。しかし、コンクリート中のカルシウム成分が水分とともに表面に移動し、空気中の炭酸ガスと化学反応を起こした「白華(はっか)現象」や、過度なひび割れ、コンクリート内部の鉄筋のさび汁がしみ出ていることが確認できた場合などは、注意が必要だ。長らく放置しておくと、建物内部を傷め、時間がたつほど修繕コストは膨大になり、着実に寿命を縮めていく。
このほか、エントランス周辺の清掃状態やポストの整理整頓具合はどうか。雑然としているのは管理員の仕事が行き届いていないためだが、背後にはそれを容認している管理組合の存在がある。マンション管理に無関心であることの裏返しだ。それは駐車場や駐輪場、ごみ置き場などの状態にも言える。掲示板に数カ月も前の古いチラシが雑然と貼られていたり、貼ったものが破れていたりするのを見るだけでも、組合運営の質を推し量れるだろう。
(本誌初出 「優良」選別のカギは議事録にあり/63 20200929)
■人物略歴
長嶋修 ながしま・おさむ
1967年生まれ。広告代理店、不動産会社を経て、99年個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」設立