マーケット・金融コロナ激変 不動産

背伸びして湾岸のタワマンを買ったパワーカップルが「住宅ローン破産」……中古マンション市場の暴落が避けられない理由

     2020年の日本経済はマイナス成長を免れない。個人所得も確実に減少する。個人所得が減少すれば、庶民が市場の主役である中古マンション市場の価格は確実に下がる。

     ただ、現状では10万円の一律定額給付金支給などの効果もあって、目に見えての不況感は深まっていない。東日本不動産流通機構によると、4~6月の首都圏の中古マンションの成約単価は前年同期比マイナス0・4%、7月は前年同月比でプラス4・7%。この数字を見る限り、コロナの影響による市場の下落は確認できない。

     一方で、住宅金融支援機構によると、返済方法の見直しや一時的な猶予などの「返済方法変更」の承認件数は、6、7月は1000件を超えた(図)。これは、住宅ローン破綻予備軍が増えている、ということに他ならない。

     住宅ローンが返済できなくなれば、ひとまず金融機関に相談するのがセオリーだ。よほどのことがない限り、返済期間の延長や一時的な猶予には応じてもらえる。

     しかし、すべての人が短期間で通常返済に戻れるとは限らない。一定数は返済不能となる。そうなった融資対象住戸は任意売却や競売というカタチで市場に売り出される。今はまだ、そこまで至った住戸が少ない、というだけだ。

     13年以降、都心とその周縁、川崎市の一部などはマンション価格が高騰した。湾岸や武蔵小杉などのタワーマンションは人気化して、東京都文京区並みの価格帯の6000万〜1億円で売れた。買ったのは主に「パワーカップル」と呼ばれる世帯年収1400万円以上の層だ。低金利なので、その世帯年収でも十分に手が届く。

    晴海フラッグ「背伸び買い」

     これはいわゆる「背伸び買い」である。タワマン購入層にありがちなパターンだ。夫婦どちらかの収入が途絶えるか激減すると、たちまち返済に窮する。

     今後、こういった「背伸び買い」のタワマン住戸が任意売却で市場に出てくる可能性がある。その時期は早くて9月以降。年末から来年にかけて急増する可能性もある。理由は、金融機関がとりあえず何らかの返済猶予に応じる期間が、半年程度が標準だと思われるからだ。6月に返済猶予を受けた場合は、年内には結論を出さなければいけない。

     最近のケースで「背伸び買い」の購入者が多かったと考えられるのは、東京五輪選手村跡地にできる「晴海フラッグ」だ。分譲される総戸数は4145戸。この中には2棟のタワマンが含まれる。

     19年末時点ですでに930戸が売り出され、894戸が契約済みとされてきた。物件引き渡しは、本来なら23年3月以降の予定だった。ところが、五輪は現時点で1年延期。晴海フラッグは選手村として使われる予定なので、当然引き渡しも延期されるはずだが、現状ではそれが確定できない。売り主側は購入契約者に対し、「五輪開催の可否が決まるまでの期間は手付金返還のキャンセルに応じる」と通知している。

     晴海フラッグは「お買い得」とも言われるが、駅から遠い割には一人前の価格だ。五輪人気の熱気で売り切ろうとした売り主側の安易な意図が透けて見えていた。だが、その予定は大幅に狂った。

     中古マンション市場の下落は、これからが本番だ。どこまで下がるか分からないが、ひとまずの基準は12年時点の市場相場。今回の局地バブルは13年のアベノミクスから始まっているからだ。例えば東京都港区内なら今の市場価格の6割程度、文京区なら8割までは下落すると想定すべきだろう。そのあとは、景気次第である。

    (榊淳司・住宅ジャーナリスト)

    (本誌初出 中古 住宅ローン破綻の増加=榊淳司 20200901)

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