教養・歴史鎌田浩毅の役に立つ地学

次は3つの震源域の連動型? 南海トラフ巨大地震が2030年代に発生する可能性が高いとされる理由

    陸に押し寄せ、家屋をのみ込む大津波=宮城県名取市で2011年3月11日午後3時55分、本社へりから手塚耕一郎撮影
    陸に押し寄せ、家屋をのみ込む大津波=宮城県名取市で2011年3月11日午後3時55分、本社へりから手塚耕一郎撮影

     日本は世界屈指の地震国であり、近い将来「南海トラフ巨大地震」という220兆円を超える激甚災害が予想されている。「トラフ」とは、海底に舟底のような平たい凹地形ができる場所を言う。南海トラフは静岡県沖から宮崎県沖まで続く水深4000メートルの海底にあるが、ここは歴史的に巨大地震が繰り返し起きた場所でもある(図)。

     日本列島には南方から来た「フィリピン海プレート」が沈み込んでいる。このとき地下でひずみが蓄積され、100年に1度くらい巨大地震が起きる。これと同時に巨大な津波が発生し海岸を襲う。

     南海トラフの北側には三つの「地震の巣」があり、震源域と呼ばれている。それぞれ東海地震・東南海地震・南海地震を起こした場所で、一部は陸地にも差し掛かる。古文書を解読して地震が起きた歴史をひもとくと、南海トラフ沿いで地震と津波が約100年おきに発生したことが分かってきた。

     そして3回に1回は東海・東南海・南海の三つの震源域が同時に活動する「連動型地震」だったことも判明した。過去のパターンを見れば、次はこの連動型地震が起きる番に当たり、首都圏から九州までの広域に甚大な被害を与えることになる。

    内陸活動期の「前兆」

     さらに三つの震源域は地震の起きる順番が決まっており、最初に名古屋沖で東南海地震が発生し、次が静岡沖の東海地震、最後に四国沖で南海地震が起きる。例えば、前回は東南海地震(1944年)が起きた2年後に、南海地震(46年)が発生した。その前の回(1854年)は、同じ場所が32時間の時間差で活動した。また3回前(1707年)には、三つの震源域が数十秒のうちに活動した。

     これまでの研究で、南海トラフで巨大地震が起きる40年ほど前から、日本列島の内陸部で地震が増加することが分かってきた。事実、20世紀の終わりごろから内陸部で地震が頻発している。例えば、1995年の阪神・淡路大震災の発生は、内陸地震が活動期に入った時期に当たる。

     内陸地震活動の統計モデルから次の南海地震が起こる時期を予測すると、2038年ごろという値が得られている。そのほか、古地震やシミュレーション結果から予想した結果、南海トラフ巨大地震の次の発生時期は2030年代(2035年±5年)と考えられる。

    (本誌初出 南海トラフ巨大地震(上) 3連動が必ず襲う2030年代/16  20200901)


     ■人物略歴

    かまた・ひろき

     京都大学大学院人間・環境学研究科教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。「科学の伝道師」を自任し、京大の講義は学生に大人気。

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