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なんと1956年以来の大変革! 日本の伝統文化「屋根瓦」の建築ガイドラインが一新されるワケ

昨年相次いだ台風で屋根に大きな被害が出た(千葉県)
昨年相次いだ台風で屋根に大きな被害が出た(千葉県)

 国土交通省は、住宅の瓦屋根の工事方法を強化するよう建築基準法告示を改める。基準強化により、古い空き家の瓦屋根では、国の基準に達せずに資産価値の目減りにつながるケースも出てきそうだ。

 昨年9月の台風15号により、千葉県では、瓦屋根が破損する住宅が相次いだ。国土技術政策総合研究所などの調査によれば、「むね」と呼ばれる頂上の水平部分や、「平部(ひらぶ)」とも呼ばれる一般的な屋根部分の破損が多かった。

(出所)国土交通省資料を基に編集部作成
(出所)国土交通省資料を基に編集部作成

 現行の建築基準法告示は、風雨にさらされやすい軒、けらば(屋根の端部分で外側に出っ張っている部位のうち、雨どいが通っていない側)、むねの瓦については、銅線、鉄線、くぎなどで屋根に接合することを義務づけている(図1)。しかし、平部はくぎなどを使っての接合義務がなく、極端に言えば置くだけで済んでいた。この基準は、1956年以来、実質的に変わっていない。

即工事は不要だが

 台風15号での被害は、現行基準で接合方法の義務規定がなかった平部や、接合の義務工法が緩かったむねに集中した。台風で屋根が吹き飛べば、その家だけでなく周囲の家屋にも大きな被害を及ぼす。今後も同規模の台風の襲来も見込まれるため、屋根の強化対策に乗り出すことになった。

(出所)国土交通省資料を基に編集部作成
(出所)国土交通省資料を基に編集部作成

 国交省は原則として、すべての瓦をねじなどで接合するよう義務づける。具体的には、軒・けらばは、ねじと2本のくぎで接合▽むねはねじで接合▽平部は原則としてくぎで接合──を義務づける(図2)。「接合の強度は、ねじ、くぎ、銅線・鉄線の順に強い」との考えに基づく。近く告示を改正する。

 なお、新基準となるこの工法は、2001年から業界の自主ガイドラインとして推奨され、5割程度の工事で適用されている。今後、新築や増改築には、新基準の工法が義務づけられる。問題となるのは、現行基準には達しているが、新基準はクリアできない瓦屋根を持つ空き家だ。新基準移行後は「既存不適格」となってしまうが、国交省は既存の瓦屋根には新基準への移行を即座には求めない。

 とはいえ、既存不適格物件は資産価値が減る上、災害に弱い瓦屋根を放置すれば周囲に危害を及ぼすリスクもある。国交省は新基準に適合する瓦屋根改修への支援策を充実させる方針で、公的支援策も活用しながら、いち早く屋根瓦の耐性を上げることが必要だ。

(種市房子・編集部)

(本誌初出 台風被害で見直し 瓦屋根の国基準強化へ 不適格は資産価値減も=種市房子 20200825)

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