テクノロジー非接触ビジネス

コロナ下でも大幅UP! 大注目の「非接触ビジネス企業」はこれだ=白鳥達哉/種市房子

    出前館は一気に普及 (Bloomberg)
    出前館は一気に普及 (Bloomberg)

     

     東京株式市場。市場全体の動きを示す東証株価指数(TOPIX)は3月の年初来安値からの上昇率が3割と、新型コロナ第2波への警戒感から上値の重い展開が続く。そうした中で、急激に株価が上昇している銘柄群がある。コロナショックを乗り越えて、収益の拡大が期待される「非接触」関連の企業だ。(非接触ビジネス)

     塾や学校に、人工知能(AI)と学ぶオンライン教材を提供するすららネットは、3月の安値から426%、オンラインの診療システムを手掛けるメドレーは同239%、ハンコを不要にする電子契約システムの弁護士ドットコムは同228%、レストランの料理を家庭に届ける宅配サービスの出前館は同213%上昇した(図)。

    (注)HDはホールディングス。終値ベース。年初来値から高値への上昇率 (出所)ブルームバーグより編集部作成
    (注)HDはホールディングス。終値ベース。年初来値から高値への上昇率 (出所)ブルームバーグより編集部作成

     すららネットは、安倍晋三首相による2月末の休校要請で、全国の学校から利用申し込みが殺到した。その件数は、全国369校から15万人分に上る。メドレーは、4月からオンライン診療での初診が認められたことが追い風になった。弁護士ドットコムは、霞が関を頂点とする「ハンコ文化」を打ち壊し、テレワークを定着させる旗振り役として市場の期待が集まる。牛丼でも高級フレンチでも、家庭のテーブルで一緒に味わえる出前館は、外食を「再定義」する潜在力を秘める。

     中小型株に詳しい三井住友DSアセットマネジメントの木村忠央シニアファンドマネジャーは、「マクロの経済環境は決して良くないが、個別で見れば、非接触・省人化などをテーマに、投資妙味がある企業がたくさん登場している」と説明する。

     野村証券の美和卓チーフエコノミストは、「非接触企業」が持つ「人を動かさない・使わない」技術自体は、デジタル社会『ソサエティー5・0』の要素技術としてコロナ前からあった」と指摘する。その普及は、規制や社会的因習から長らく阻まれていたが、「人命を守る」「経済を回す」要請から、人々が受け入れるきっかけを一気に作ったのが、「コロナショックの本質」と見る。

    無人店舗

     街中の店舗でも「非接触」をキーワードにしたデジタル化は加速している。

     JR東日本の子会社「JR東日本スタートアップ」と金融・システムコンサルタントサインポストの合弁会社タッチトゥーゴー(TTG)は、無人決済システムを開発している。このシステムのデモンストレーションの場となっているのが、JR山手線と京浜東北線に今年3月にオープンした新駅「高輪ゲートウェイ」駅の無人コンビニエンスストアだ。

     店舗の棚や天井にカメラやセンサーを設置し、人や商品の動きを分析。棚から商品を取って、決済エリアに入るだけで精算画面が表示され、交通系ICカードで決済すれば買い物は完了する。駅の売店の規模(50~60平方メートル)でこの無人決済システムを使えば、品出し担当の1人だけで運用でき、3密(密閉、密集、密接)を防げる。TTG代表の阿久津智紀氏は、「小売店や病院、ビルの管理会社など、30件ほどの相談が来ている。理由のほとんどが、コロナの影響で従業員が足りなくなったためだ」と話す。

    無人決済は、店員の感染防止にも役立つ(高輪ゲートウェイ駅の無人コンビニ)
    無人決済は、店員の感染防止にも役立つ(高輪ゲートウェイ駅の無人コンビニ)

     今後は、オンライン営業も増えそうだ。AIベンチャーコグニティは、オンライン商談時の営業トークの解析と評価・指導を行うサービス「テレ検」の提供を開始した。同社は、対面商談での営業トークの解析・評価サービス「アップサイター」を既に提供している。リモートワークの普及に伴い、サービス利用者から「オンライン商談だと対面より商談が成立しづらくなった」と相談を受けたのがきっかけとなって、テレ検を開発した。6月のリリース発表時から反響も大きく、特に金融業界からの問い合わせが多いという。

     保険ショップ・代理店ほけんの窓口は、7月6日からビデオ会議システムZOOMを使ったオンライン相談を全国展開する。コロナによる雇用不安で保険の見直しをしたいという要望も多いが、ソーシャルディスタンス確保のためには店舗に入れる人数も限られる。初期の保険の相談段階ではオンラインで3密を回避し、詳細な商品説明や契約時には店での対面という組み合わせで、顧客接点を保つ。

    高まる「リアル」の価値

     コンサートや演劇など、3密の典型として壊滅的な打撃を受けた娯楽業界でも、「非接触」をテーマにした革新が起こりつつある。

     演劇のオンライン配信サービス「観劇三昧(ざんまい)」では、7月から演劇のライブ配信サービスを開始する。サービスを提供するネクステージ代表の福井学氏は、「気兼ねなく劇場に行ける状況になるまでは、オンライン配信のチケット代が劇場や劇団の収益の助けとなる」とする。

    観劇三昧で配信した「劇団5454(ランドリー)」の上演。あらすじやキャストも表示される
    観劇三昧で配信した「劇団5454(ランドリー)」の上演。あらすじやキャストも表示される

     野村証券の美和氏は「コロナによる外出自粛で、人が『リアル』の場で体験することの付加価値が高くなった」と分析。「今後は、プレミアムの『リアル』サービスと、オンラインの汎用(はんよう)サービスを組み合わせる事業者が出てくるのでは」と占う。

     ものづくりの世界でも、コロナの拡大で、自動化が進み、キーエンスやダイフクの株価が急上昇している。みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは、「新型コロナは終息のメドが立っておらず、『非接触』は株式市場のテーマとして息が長いものになる」と予想している。

    (白鳥達哉・編集部)

    (種市房子・編集部)

    (本誌初出 「脱3密」に勝機あり リアル×ネットで株価急騰=白鳥達哉/種市房子 20200714)

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