外食 マックは客単価45%上昇 業態そのものの見直しも=加藤大樹
日本フードサービス協会が発表した、外食企業208社の5月の総売上高は、前年比で67・8%。外食業界は苦境に立たされている。そのような中、5月に既存店(13カ月以上開店している店舗)売上高前年比115・2%という驚異の数字をたたき出して話題となったのがマクドナルドだ。
同社がこれほど数字を伸ばせたのは、テークアウトやデリバリーの強化に長年取り組んできたためだ。郊外店の多くがドライブスルーに対応し、また自前のデリバリー事業には2010年に参入、17年にはウーバーイーツとも提携している。(非接触ビジネス)
さらにこれらのサービスの利便性を高めているのが自前のスマホアプリで、デリバリーでもテークアウトでも、注文がその中で完結できる。テークアウトの場合、アプリで決済まで済ませると、注文情報が店舗のレジと同じような形でお店のキッチンに送信される。利用客は店でレジ待ちすることなく、スマホ上でじっくりメニューを見て選べるので、ストレスがない。
こうした取り組みが奏功し、5月は客数が前年比で2割も減ったが、ファミリー層など複数人数での注文が多くなり、客単価は45%も伸びた。もちろん、この前提には商品やマーケティングへの顧客の支持があるが、それをよりしっかりくみ取れるだけの体制が整っていたことが、他社以上に数字を伸ばした要因と言えよう。
ラーメンも“持ち帰り”
これまでデリバリーやテークアウトを重要視してこなかったチェーン店も、今回のコロナ禍を受け、さまざまな対応に踏み切っている。
ウーバーイーツと並ぶ2大デリバリー代行企業の出前館は、5〜6月にかけて、くら寿司、びっくりドンキー、ロイヤルホスト、すき家などと相次いで提携を発表した。
また、「自前のデジタル化でデリバリーやテークアウトの注文に対応したい」という外食企業のニーズに応えようと、IT企業のショーケースギグは、「モバイルオーダープラットフォーム」を開発。2月には吉野家がそのサービスを活用した「スマホオーダー」を開始している。
これらのインフラ整備に加え、メニューにも工夫を凝らす企業がある。例えばスシローは自宅でファミリーが楽しめるように、ネタ、しゃり(すし飯)、のりをセットにした「手巻きセット」を開発。また東京・池袋の麺屋宅二郎はテークアウト専門ラーメン店で、麺、具材、スープのセットに加え、野菜の量など4項目を客側がカスタマイズできることがウリだ。各社はあの手この手で、自宅ならではの外食の楽しみ方を提供している。
一方で、夜の客数が大きく減少している居酒屋チェーン店は、業態そのものを見直す動きが出ている。塚田農場は居酒屋を定食屋に転換、ワタミも居酒屋事業を縮小し、から揚げ専門店、焼き肉食べ放題などの業態を強化していく方針だ。
ウィズコロナで顧客の消費行動がどう変わっていくか。この先も各社の変化対応力が問われることになりそうだ。
(加藤大樹・月刊『激流』副編集長)