テクノロジー本当に強い バイオ医薬株

徹底診断! 実力と課題 製薬大手5銘柄=和島英樹

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    中外製薬 血友病薬好調で最高益へ

     スイスの製薬大手ロシュ傘下の製薬メーカー。ロシュが6割の株式を保有する筆頭株主だが、研究に関する意思決定権は中外製薬にあり、独立した経営を行っている。ロシュの販売網を活用できる強みがある。

     現在けん引役となっているのが血友病薬の「ヘムライブラ」だ。血友病は血液を固めるために必要なたんぱく質の一部が生まれつき不足しており、けがなどでの出血が止まりにくい病気。他社製品が週2~3回の静脈注射が必要なのに対し、ヘムライブラは週1回程度の皮下注射で済み、患者の体への負担が少ない。

     特に海外で伸びており、同薬の今年1~6月期のロシュ向け売上高は前年同期比9・8倍の157億円。その他の薬を含めたロシュからのロイヤルティー(販売に応じた収入)などの収入は625億円(同65%増)。業績は好調。2020年12月期も経常的な業績指標であるコア営業利益ベースで前期比22%増の2750億円を見込み、連続での最高益更新を予想する。

    パイプライン(新薬候補)も豊富だ。臨床試験の最終段階(第3相)の候補は14。うち、自社開発品が4品目。その中には、抗リウマチ薬として販売され、新型コロナウイルス肺炎への効果が期待される「アクテムラ」も含まれる。

    第一三共 抗がん剤開発に成功

     がん領域が好調。抗がん剤「エンハーツ」(開発コードDS−8201)を軸に三つの新薬開発を重点的に行っている。いずれも抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる薬で、強力な化学療法剤をがん細胞を標的とする抗体に乗せがん細胞に運ぶことで、がんを効率的にたたく。

     英製薬大手のアストラゼネカがこの技術に注目。昨年3月にDS−8201に関するグローバルな開発、商業化契約の締結に至った。第一三共は契約一時金やマイルストーン(開発段階に応じた収入)など最大7600億円を受け取る。

     エンハーツは乳がん領域で昨年12月に米国で承認を取得。今年1月から米国で販売が開始された。日本でも今年3月に承認され、他に薬物療法の選択肢がない患者を対象として5月から販売されている。エンハーツの売り上げは2022年3月期から収益に本格的に寄与してくるとみられる。

     また、米国では乳がん以外の胃がんや肺がん領域でもブレークスルーセラピー(画期的治療薬)に指定されており、早期の承認、更なる販売拡大が期待されている。第一三共としてはエンハーツ関連で受領した資金を他のADC薬に投入し、開発を急ぐ方針。すでに肺がん領域などで臨床試験を進めている。

    武田薬品工業 自社創薬に残る課題

     2018年5月にアイルランドの製薬大手であるシャイアー社を買収した。シャイアーの中核事業は、希少疾患に関する医薬品の開発・製造。買収の大きな理由は、自社に有望なパイプライン(新薬候補)が少ないことが要因だったと考えられる。

     武田は昨年11月、20~24年度を承認目標とする有望新薬候補12製品(14効能)を「ウェーブ1」として発表したが、自社創製したのは「TAK−935」(ドラべ症候群=てんかんの一種)と「Orexin2R−ag」(ナルコレプシー=過眠症の一種)の二つのみ。他は他社からの導入や買収で獲得したものだった。

     一方、シャイアー買収によってパイプラインは充実しつつある。希少疾患は、一定の条件を満たせば、国からの支援や一定期間独占的に販売できる権利を得られる場合もある。欧米では希少疾患でノウハウを蓄積し、将来の新薬の布石を打つメーカーは多い。武田ではウェーブ1の合計売上高をピーク時に100億ドル(1兆500億円)超と予想している。

     今年8月には日本で一般用医薬品などの製造販売を手がける市販薬事業を2420億円で売却すると発表した。9月にも欧州・カナダなどで展開する一部医薬品の売却を公表。がんや希少疾患分野に資金を集中させる狙いだ。

    アステラス製薬 特許切れに警戒感

     相次ぐ特許切れに、新薬の開発を急いでいる。主力製品の前立腺がん治療薬「イクスタンジ」が拡大し、急性骨髄性白血病治療薬「ゾスパタ」も日米で好調だ。一方、昨年、独占販売期間が終了した過活動膀胱(ぼうこう)治療薬「ベシケア」の売り上げが落ち込んだが、昨年12月に米国で発売された尿路上皮がん治療剤などがその分をカバーした。

     イクスタンジのグローバルな売上高は2020年3月期に4000億円に達している。過活動膀胱治療薬「ミラベグロン」も好調。しかし、ミラベグロンは23年ごろ、イクスタンジは27年ごろに特許が切れ始めるため、落ち込みへの警戒感は強い。

     数年後の特許切れを見据えて、新薬開発に注力している。更年期障害に伴う血管運動神経症状の治療薬「フェゾリネタント」など重点開発6品目の開発に資源を投入。また、18年には米ポテンザ・セラピューティクス社を買収し、がんの免疫療法で臨床試験を進めている。

     今年1月には遺伝子治療技術を有する米バイオ企業のオーデンテス・セラピューティクス社を約3200億円で買収した。次世代の医薬品として期待されるが、直近の臨床試験では、3例で重篤な有害事象が発生し(2列で死亡)、臨床実験が差し止めとなった。

    エーザイ 抗がん剤の好調持続

     認知症治療薬「アデュカヌマブ」への期待感が高まっている。米バイオジェンと共同開発しているもので、7月に米国への新薬承認申請を完了したと発表した。臨床試験で1600人を超える患者に1年半の投与を行い、認知機能の低下を抑制できたことが確認できたという。実用化されれば認知機能の低下を抑える世界初の治療薬となる。

     業績は、2021年3月期はアデュカヌマブの発売に絡む先行費用や、不眠症新薬の立ち上げ費用などで営業利益は大幅減益を見込む。一方、短期的な業績では自社創薬の抗がん剤「レンビマ」が好調で、業績を支える。今年4~6月期のレンビマの売上高は347億円で、前年同期比4割増えた。

     また、レンビマには、がん細胞が増殖する際に新たな血管を作ろうとする動きを妨げる効果がある。肝細胞がんに適用拡大されたほか、子宮内膜がん分野ではがん免疫薬「キイトルーダ」との併用療法で成長しており、今後も単剤、併用療法ともに伸びが見込める。

     エーザイのアルツハイマー型認知症治療薬のパイプライン(新薬候補)には「BAN2401」もある。これもバイオジェンとの共同開発で、アデュカヌマブと同様の仕組みだが抗体が異なる。患者の症状や状態などで使い分けが期待される。

    (和島英樹・経済ジャーナリスト)

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