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経済・企業 本当に強い バイオ医薬株

将来性に期待! バイオ医薬 注目7銘柄=和島英樹

Bloomberg
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小野薬品工業 「オプジーボ」復調

 がん免疫治療薬「オプジーボ」が成長をけん引。がん細胞は自らを攻撃する免疫細胞「T細胞」の表面にあるたんぱく質「PD-1」に作用して攻撃にブレーキをかけているが、オプジーボはPD-1にくっつき、がん細胞のブレーキを阻害する。患者の体内に備わる「免疫」の力を利用し、がん細胞への攻撃力を高める仕組みで、2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授の理論が背景にある。

 オプジーボは14年の発売以降、高額な薬価が問題となり3度にわたって薬価が引き下げられ、売り上げはやや伸び悩んでいた。しかし、20年4~6月期の連結決算では、胃がんや腎細胞がん向けが堅調に推移したのに加え、新たに食道がんでの使用が拡大し、前年同期比9.5%増の244億円と復調している。

ロート製薬 再生医療が次の柱

 一般向け医薬品の目薬で世界トップのメーカーだが、「肌ラボ」や「オバジ」といったスキンケア商品が収益の柱に成長。近年では再生医療にも注力している。昨年、武田薬品工業の一般用医薬品(大衆薬)子会社だった武田コンシューマーヘルスケアの杉本雅史元社長が社長に就任。ヘルスケア分野の強化、再生医療などの新規事業に注力する姿勢を示した。

 再生医療の研究は2011年から開始。17年には新潟大学と共同で、肝硬変の治療に脂肪に含まれる幹細胞を使う治験を始め、18年9月には塩野義製薬と国内販売の委託契約も結んでいる。また、脂肪に含まれる幹細胞がコラーゲンを生み出す能力があることを発見し、エイジングケアへの応用も狙う。育毛剤やアイケア分野などが有望という。

ペプチドリーム メガと次々に提携

 特殊なアミノ酸を結合させた小型のたんぱく質「特殊ペプチド」の量産化技術を世界で初めて開発し、大手製薬の創薬支援を行う。

 薬には一般的に処方される低分子薬と、新薬が相次ぐ抗体医薬などの高分子薬がある。前者は分子量が小さく低コストだが、特定のたんぱく質を狙って作用させにくい。後者は特定のたんぱく質に効く半面、コストが高め。特殊ペプチドは両者の間の「中分子」で、抗体医薬と同様の効果がある薬を低コストで作れると期待される。

 提携先は英国のアストラゼネカなど世界のメガファーマがずらり。契約一時金や開発に応じた収入などで業績は順調に拡大。2020年6月現在で進行中のプログラム数は114にも及び、20年12月期は純利益が過去最高となる見通し。22年6月期中の新薬販売開始を目指す。

JCRファーマ 脳に薬届ける独自技術

 成長ホルモン剤などのほか、日本初の再生医療製品で、白血病の合併症を抑える「テムセル」を手がける。

 9月29日には、難病の「ハンター症候群」治療で、脳組織に効率的に医薬品成分を届ける独自技術「J−ブレイン・カーゴ」(血液脳関門通過技術)を活用した初めての薬の製造・販売を厚生労働省に承認申請したと発表した。厚労省はすでに希少疾病用医薬品に指定している。

 ハンター症候群は、乳児期から骨格変形や低身長などの症状が出る遺伝子疾患の「ライソゾーム病」の一種。脳の血管には異物の取り込みを防ぐ関門があり、既存の治療薬では薬効成分が脳に届かなかった。承認されれば世界初で、将来的にはアルツハイマー型認知症などの治療薬への応用も期待される。

タカラバイオ 「CAR-T療法」で先行

 研究用試薬や実験機器の販売が主力で、稼いだ収益で創薬開発を進める黒字のベンチャー。最も注目されているのが、患者の免疫細胞「T細胞」を遺伝子改変して強化し、がんへの攻撃力を高める「CAR-T細胞療法」の技術だ。

 T細胞を遺伝子改変する際、独自開発の「レトロネクチン」を添加することで、高効率な改変が可能になる。さらに白血病の一種「急性リンパ芽球性白血病」を対象にCAR-T治療薬の第1、2相の治験を進めており、この分野での日本のトップランナーだ。

 今年6月には、関節や筋肉などに悪性腫瘍ができ遠隔転移も生じやすい「滑膜肉腫」向けに大塚製薬と共同開発している遺伝子治療薬が、厚生労働省から希少疾病用の再生医療製品に指定された。早期の実用化に期待がかかる。

ジーエヌアイグループ 中国で肝線維症治療薬

 本社は日本に置きつつ、中国に自社工場を持ち、新薬の開発・製造・販売まで一貫して手掛ける。肺の間質と呼ばれる部分に傷が生じ、息切れなどの症状が出る突発性肺線維症の治療薬「アイスーリュイ」を2014年から中国で販売。同疾患では中国で唯一の承認薬で17年には中国の保険目録に収載され、業績が拡大。20年12月期上半期までの3年間の年平均の売上高増加率は82.4%にも及ぶ。

 20年1~6月のアイスーリュイの売上高は前年同期比30%増だ。適用拡大も見込まれ、肺に炎症が起きるなどの結合組織病関連間質性肺疾患で第3相の臨床試験中だ。8月には中国でB型肝炎ウイルス由来の肝線維症の治療薬「F351」の第2相臨床試験で、統計的に優位な改善結果が得られたと発表し、株価を押し上げた。

アンジェス 遺伝子薬の米国承認カギ

 遺伝子治療薬を核に展開する大阪大学発の創薬ベンチャー。新型コロナウイルス感染症向けDNAワクチンは、9月に予定通り阪大医学部付属病院で第1、2相の臨床試験を始めた。目標症例数30例で、予定試験期間は2021年9月末まで。速報結果は20年10~12月に公表する予定。結果が良好なら400人規模に広げてさらに調べる。厚生労働省は「ワクチン生産体制等緊急整備事業」に採択し約93億円を交付。ただ、海外のワクチンの進展が早く、先行きは楽観できない。

 もう一つの注目点は、日本初の遺伝子治療薬「コラテジェン」の海外展開だ。足の血管が詰まる重症虚血肢潰瘍の治療薬で、注射すると血管が新生して改善する。患者の多い米国では後期第2相の臨床試験中。米国で承認されれば、悲願の黒字化が視野に入る。

(和島英樹・経済ジャーナリスト)

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