教養・歴史書評

議論呼ぶ図書館資料の送信=永江朗

 図書館資料のコピーを、ファクスやメールなどで、利用者に送信できるようにすべきだ──。文化庁文化審議会著作権分科会のワーキングチームが11月13日に出した報告書が、出版界で議論を呼んでいる。報告書名は「図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)に関する報告書」。文化庁のサイトで全文公開されている。

 現状では図書館資料(書籍や雑誌など)は、「一部分を1人につき1部提供する場合に限り」複製して提供することが可能だ。基本的には利用者が図書館まで出向いて提供を求めるわけだが、国立国会図書館のように郵送サービスを行っている館もある。しかし、ファクスで送信したり、デジタル化してメールで送信すること(公衆送信)は、著作権法で認められていない。これを可能にするよう法改正してはどうか、というのがワーキングチームの報告だ。

 図書館利用者のこうした要望は以前からあった。だが、新型コロナウイルス禍により、要望はより切実なものになった。多くの図書館が感染拡大防止を理由に休館したり利用を制限したりしたためで、館まで出向いて複製を依頼することができない利用者が増えている。国立国会図書館も抽選予約制を続けている。

 報告書ではデータの流出防止や権利者への補償などについても述べられているが、出版社や著作権者団体などの一部からは、不安や反発の声が上がっている。本の売り上げが減るのではないか、というのである。海賊版が増えることや電子書籍ビジネスへの影響を心配する声もある。

 筆者はこの10月、ケガをして3週間の入院を余儀なくされた。コロナ禍により、外出はもちろん、家族も含めて面会禁止だった。インターネットと電子書籍、そしてネット通販を使って、なんとかベッドの上で仕事を続けた。病院の前には区立図書館があるのだが、残念ながら利用できなかった。

 報告書にあるような資料送信サービスがあったら、どんなに助かったことだろう。また、著作者・著作権者の一人として、自分の著作物が資料送信サービスによって新たな読者に出会えるなら、大いに喜ぶべきことだと思うのだが。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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