映画 Mank/マンク 粘り強い描写で炙(あぶ)り出されるハリウッド黄金時代の秘話=芝山幹郎
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カリフォルニア州サンシメオンにあるハースト城には、2度訪れた。最初は空疎な観光地と思ったが、次に非公開の深奥部を見せてもらったときは、さすがに妖気を感じた。「市民ケーン」(1941年)に潜在する悪徳もじわりと伝わる。
「Mank/マンク」の主人公は、「市民ケーン」の脚本家、マンクことハーマン・マンキーウィッツ(ゲイリー・オールドマン)だ。酔いどれで賭博好きの中年男だが、製作元のRKO映画に全権を委ねられたオーソン・ウェルズに指名されて脚本の執筆に取りかかる。40年、彼は砂漠のコテージに缶詰めにされ、60日の猶予が与えられる。
映画は、30年代と40年代を振り子のように往来する。才筆のマンクは、当時MGMを主戦場としていた。ハリウッド黄金期とあって、出てくる顔ぶれは凄(すご)い。ベン・ヘクト、ジョージ・コーフマンといった有名脚本家はもとより、MGMの帝王ルイ・B・メイヤー、その片腕のアーヴィング・タルバーグ、マンクの実弟で、のちに名監督として知られるジョセフ・L・マンキーウィッツといった大物が続々と登場する。そしてもち…
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週刊エコノミスト
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