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教養・歴史書評

中国 「怒る」べきか、「反省」すべきか 日清戦争論=辻康吾

 ネットや在日中国人との話の中から、中国で日本への「関心」が非常に高まっているように感じられる。一昨年1000万人近くにのぼった中国人観光客の来日がその頂点だったが、その後もアニメ、コスプレのブーム、そして外国関係の出版物の7割が日本関係だとも言われ、日本関係の話題が多い。日本への「関心」といってもさまざまで、日本軍を悪鬼とする「抗日神劇」や、日本は再び中国を侵略しようとしているなどの相変わらずなものもあるが、同時に改革開放後に最大の援助をしてくれたのは日本だったとか、さらには日本こそ今後の近代化のモデルだとする意見さえもある。

 今さらのことだが、中国でのさまざまな日本観、日本論の中で真剣に議論されてきたのは明治維新である。その一つの焦点は、日清戦争をどう考えるか、つまり同じアジアの国なのに日本が素早く近代化し、大国であった清朝をなぜ打ち破ったのかという問題である。かなり発行が遅れていた日本関係専門のムック誌『知日』23号がようやく到着し、そのタイトルは『甲午海戦(黄海海戦)再認識』であった。

 2011年創刊、すでに44冊となる同誌は、これまで「奈良美智」「猫」「手帳」などこちらも気づかぬ日本の文化的、社会的事象を詳細に紹介、論評してきた。近着の『甲午海戦再認識』も黄海の海戦と、それに関係する各種データ、人物、思想などを詳細に紹介、あの戦いの歴史的意味を追求している。

 巻頭で歴史家、評論家など11人の意見を紹介、その一人である社会科学院近代史研究所の馬勇氏は日清戦争に対する中国人の見方として、かつては孫文のようにその敗北の原因を探り、そこから清朝打倒の必要性と変革の重要性を強調したが、最近になって歴史的事実を無視し、正義と邪悪の戦いとする誤った見方が高まっていると指摘している。さらに馬氏はあの戦争は、日中両国だけでなく、アジア全域、さらには当時の国際情勢全体の中で客観的に理解すべきであるとしている。

 日中関係史の局部のみをとりあげ、政治的プロパガンダとする中国の政治的歴史論を離れ、客観的な歴史観を樹立することが安定した日中関係を築くためにも必要なようだ。

(辻康吾・元獨協大学教授)


 この欄は「永江朗の出版業界事情」と隔週で掲載します。

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