教養・歴史アートな時間

映画 聖なる犯罪者 気むずかしいが引力の強い映画 若者の仮装と呻きが眼を奪う=芝山幹郎

 20歳前後の若者には、とんでもない偶然が舞い降りることがある。たんなる僥倖(ぎょうこう)なのか、ある種の憑(つ)き物なのか、それとも結果的には、交通事故のような災厄となるのか。結論は軽々には出せないが、偶然が舞い降りてきた瞬間は、運命がカチリと音を立てる。

「聖なる犯罪者」の主人公ダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)も、その音を聞いたのではないか。20歳の彼は、殺人を犯して収容されたポーランドの少年院を仮退所したところだ。

 少年院でミサのまとめ役を任されて以来、ダニエルは神父になりたいと願ってきた。が、前科者は神学校に入れない。彼は、紹介された製材所の近くにある教会の扉を開く。素姓を尋ねられた彼は、反射的に「司祭です」と答える。鞄には、少年院でくすねてきた僧衣が入っていた。

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